告白(雅紀) 11 ページ45
翔サイド
突拍子もない話とまではいかないけど、かなり驚いた雅紀の話。
医者なら1度は考える開業医という選択肢。
俺は常に第一線でって思っているから、病院を離れるつもりはないけど。
雅紀は随分考えたんだろうが、俺はあんまり賛成できないかな。
小さくても何でも開業すれば全責任が雅紀にかかることになる。
それは医師としてだけではなく、経営者としても。
開業してから暫くは診察が休みでも、何だかんだ細々とした雑用などで、休みなんてないだろう。
雅紀がそんな無理ができるのか、俺は不安でならない。
「雅紀はさ、良いときの事ばっか考えてない？
前向きに色々考えている所、水を指すようで悪いけどそんなに簡単なことではないぞ？」
こんなこと、俺に言われるまでもなく考えているだろうけど、一応訊いておかないと…
「うん、分かってる。
俺の先輩にも成功してる人とそうでない人がいるから。
でも俺は割りと自信あるんだ。仕事上の人付き合いは下手じゃないと思うし、俺こう見えてスッゴい顔広いんだよ？」
めちゃめちゃ大きな事をやろうとしているのに、雅紀にはそんな気負いのようなものは全くなくて(苦笑)
「お前さぁ、顔が広いのは大事な事ではあるけど、そうだからって上手くいくとは限らないよ？分かってるとは思うけど」
俺が更に否定的に言っても、
「もちろん患者さんが来なければ話になんないだろうけど、普通に考えてゼロってことはないだろうし。
経営とかそういう専門外の難しいことは、知り合いに聞きながらやってく。
整形外科の患者さんて、ホントに色んな人がいてさ？俺が仲良くなった人には会計士、弁護士、税理士、銀行の頭取をはじめ、あらゆる職業の人がいるんだ。
それに製薬会社の人やＭＥさんとも仲良くやって来たから。
開業するときは力になるよって何度も声を掛けてもらってる」
そう屈託なく笑う雅紀は、浮わついた感じはなく、ただ前を、未来だけを見つめているそんな目をしていた。
「そうなんだ。色んな分野の専門家に相談してるんなら、俺が色々言うことではないな。
もちろん雅紀も必死で考えたんだろうし」
こんな簡単な会話で全てを納得できた訳ではないけど、雅紀が腹を括ってるっていうのは分かった。
「で、いつ頃を考えてるの？」
智にぃの質問に雅紀は『最短で！』って…
もう誰にも止められない(苦笑)
「私は来年の春から看護学校に行けるように、今から勉強頑張る」
って。
こっちも本気だな…
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作者名：虹
| 作成日時：2018年12月10日 22時
