【ars】ステップファミリー 13 (ページ29)

今日:10 hit、昨日:58 hit、合計:191,619 hit

職場復帰(雅紀) 3 ページ29

翔サイド

食堂に入ってオムライスとざるそばをトレーにのせ、歩いていると雅紀が歩いてきた。

スラッとした細身の体に長い手足。そこにドクターコートを纏った姿は、さながらテレビドラマに出てくる医者のようで、思わず見とれてしまう。

「やっぱ白衣を着てる雅紀は格好いいな」

うっかりそう言ってしまっら、雅紀は驚いて、

「もう翔にぃ止めてよ！」

思いっきり背中を叩かれて、危うくそばもオムライスも飛んでいくところだった(笑)

「ちょ、何すんだよぉ。溢れるだろうが！」

焦って体勢を立て直す俺を見て、『あひゃひゃ！』って笑ってる。

その声を聞いて、滑り出しは上手くいったんだと理解した。

雅紀は元々凄く気遣い屋で、優しいヤツだから人間関係に於いては特に心配はしていなかった。

ただ本人はそれが一番心配なんだと言わんばかりに、不安だったようで…

でもその不安が消えたからこそ、こんなに晴々した顔つきで食堂に来たんだろう。

そう思うと嬉しくて、

「早く来いよ？先行ってんぞ～」

俺は足取りも軽く、いつもは憂鬱な座席探しに向かう。

暫くして唐揚げ定食を持って現れた雅紀は、朝の院長室での話をしてくれた。

院長も整形の医局長も温かく迎え入れ、優しい言葉を掛けてくれたと聞いて、ホッとした。

俺も顔見知りの人たちだから、大丈夫だとは思っていたけど、やっぱり本人から聞くまでは心配だった。

目の前の唐揚げを猛スピードで食べている雅紀を見ていると、朝、全身に纏わせていた緊張や不安は既に消えていて。

代わりに見えるのは安堵とみなぎるヤル気。

本来なら徐々に上げていって欲しいところだけど、雅紀はいつだって全力投球だから(苦笑)

当面は残業も当直もないらしいから、俺たちは巧くストレスを発散できる家庭環境を作ってやることを心掛けようかな？

久し振りに見る雅紀の意欲的なキラキラした目は、俺の食欲を煽るようで、いつも以上に炭水化物ばかりの昼御飯が美味しく感じられる。

「それにしても、翔にぃのお昼ごはんは酷いね？
医者のくせに良くそんな偏った食べ方するよ」

って、呆れ顔で言われた。

「何言ってんの？疲れた脳には糖が必要なんだよ！それには炭水化物。
どこにも間違いなんて見当たらないけど？」

そう言い切る俺をぽか～んとした顔で見ていた雅紀は、

「ひゃはは、その論理。久々に聞いた！
変わんないね、翔にぃは」

大笑いしている。

他愛ない会話に俺の中にも安堵が広がった。