【ars】ステップファミリー 13 (ページ13)

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一番が良い！(和也＆潤) 13 ページ13

翔サイド

和の部屋のドアを開けると…

一面ティッシュペーパーの海で。その所々に空のティッシュボックスがいくつも転がっている。
そしてベッドの上にあったであろう、全ての物が床に引き摺り下ろされていて。

その空っぽになったベッドの上で、子犬のように丸まって眠る和。

この時になって初めて俺は、和の言葉で表現できない程の怒りに気が付いたんだ。

そっと、そっと、ベッドに近づき、そのまだまだ小さい体に覆い被さるようにして抱き締めた。

「ごめんな、和。ごめん…」

耳元でそう囁き、和を抱き上げた。

睡眠が浅く、敏感な和を動かしたくはないけど、このまま寝かせておくわけにはいかないから。

自分の部屋に和を連れて行き、壁側にそっと横たえた。少し冷たくなった体にタオルケットを掛け、ベッドに腰掛けて、頭を何度も何度も撫でてやる。

そうしながら、俺は今日帰宅してからの自分をもう一度振り返っていた。

そして気付いたことは、その記憶の中に驚くほど和や潤の姿がないってこと。

帰って来てすぐに玄関で迎えてくれた和の表情さえ思い出せない。それだけ、自分の気持ちに余裕がなかったんだろう。

和が『赤ちゃん、すっごくカワイイの！』って言ったあの時、俺は確かに『はぁ？何それ』って思ったんだ。

突然、辞めたナースの子どもを預かるって言い出した智にぃに対する苛立ちがそこにはあった。
そしてその預かった子どもが、生まれて間もない赤ちゃんだったことに驚いて。

だけどそんなのは大人の勝手な都合。そんな事で生活を乱されて、和や潤はいい迷惑だったに違いない。

いつもなら帰って来たら真っ先に抱っこしてもらって、一緒にシャワーを浴びて。食事中は、保育園での出来事を聞いて貰って。

それを全部邪魔される形になった訳だから、和の気持ちが乱れても仕方ない。

弟や妹が生まれても、上の子は赤ちゃん返りしたり気持ちが揺れ動くんだから。

なんの準備期間もなく、突然現れた存在に自分の大事なポジションを奪われたショックは、計り知れない。

その事に遅れ馳せながら気付いた俺は、ののかちゃんが帰るまでの期間、どう和や潤と向き合うかを話し合うため、一旦部屋を出た。