一番が良い！(和也＆潤) ページ1
智サイド
朝ご飯の後、部屋で出勤のための準備をしていると、スマホが震え出した。
病院からかと思い、慌ててスマホのディスプレイを確認すると、11桁の数字が並んでいる。
「誰だろ…」
心当たりがないものの、無視することはできなくて、通話をタップ。
「もしもし」
敢えて名前を名乗らず、向こうの出方をみる。
『あの、大野さんの携帯で間違いないですか？』
聞き覚えはあるものの名前がすぐに浮かぶほどの間柄ではないのだろうか、依然誰だか分からない。
「はい、大野ですが…」
『あの、佐藤です。6月に辞めた佐藤です』
あ、そうだ。この声は確かに。
「あ、佐藤さん。元気？どうしたの？」
突然退職した彼女は、何やら思い悩んでいる様子だった。何度か訊いてみたけど、彼女から悩みを打ち明けられることはなかった。
だから、
「もし、僕でできることがあるなら相談に乗るから、何時でも連絡して？」
って、連絡先を渡したんだ。
それで4ヶ月近く経って、連絡して来たってことか…
「何かあった？」
もう一度そう訊くと、
『あの…こんな図々しいお願いごできるほど親しくないのは重々承知しているんですけど、どうしても頼める人がいなくて。だから…』
って今にも泣き出しそうな声で話始めたんだ。
ここまでの話の流れで、長くなると察知した僕は、
「ごめん、今から出勤なんだ。後でこっちからこの番号に連絡しても良い？」
悪いとは思ったけど、朝の忙しい時間だったから、そう断って一旦電話を切らせてもらった。
「もう出れる？」
部屋の入口から顔を覗かせた翔に声を掛けられ、ネクタイを首に引っ掛けて部屋を出る。
「えっ？寝てたなんてこと、ないよね？」
完全に準備が終わってない僕を見て、不可解そうに言う翔。
「ははっ、いくら僕でもこのタイミングで寝たりしないよぉ」
そう抗議の声を上げると、『あ〜良かった！』て。
翔の中の僕って、そんなヤツなの？って不安になったけど、それ以上突っ込むのは止めた(苦笑)
玄関を出て車の前で、
「今日、運転お願いね？ちょっと電話したいから」
「りょうかーい！」
軽い返事が返ってきたから、助手席に乗り込む。
すぐにスマホを手にし、通話記録から佐藤さんの番号をタップする。
ワンコールで繋がり、
「大野です。ごめんね、さっきは…
今、車の中だから病院に着くまでなら話せるから、手短にお願いできる？」
時間がなくて、話を急かした。
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作者名：虹
| 作成日時：2018年12月10日 22時
