一難去ってまた一難 9 ページ10
雅紀サイド
ゆかをおぶって和室まで来たものの、この後どうしようかと迷ってしまう。
にぃたちが内科医ならすぐにでも病院に押し掛けて診てもらうんだけど…
もう受付も終わっている時間だからな。
取り敢えず、様子伺いにLINEを送ってみることに。
運が良ければ、遅い休憩を取っているような時間だから、すぐに連絡が来るかもしれない。
どうやら今日はツイてるらしい。
翔にぃからすぐに返信がきた。
ゆかが高熱だけどどうすれば良い？って送ったら、今度は着信音が鳴った。
『もしもし、俺』
「もしもし、休憩なのにごめんね？」
『ん、そんなのは大丈夫。ゆか連れて来れる？ひとりで』
「それは大丈夫だけど、受付終わってるよね？」
『俺と仲良い内科医が何人かいるから、診てくれる人探しておく。だから連れて来てくれる？
俺、午後は外来ないから、少し位なら抜けられる。
出掛ける時にもう１度LINE入れておいて』
「分かった。じゃあ、すぐに準備して連れて行く」
『ん、よろしく。気を付けて来いよ？』
クタッと布団に横になっているゆかに、
「翔にぃが友達の先生を探してくれるから、病院行こうね？
ちょっと準備して来るから、ここで待ってて？」
力なく小さく頷いたゆか。
俺は2階に駆け上がり、さっと着替えを済ませた。
またパタパタと下りてきた。
「ゆか？何か持っていくものある？いつものバッグがあれば良い？」
また頷くだけの返事が返ってきたから、
「よし、このまま抱っこして車まで行こうな？」
今度は階段がないから、ゆかに負担の掛からない抱っこで車まで運んであげる。
玄関で1度座らせ、車のドアを開けてシートを倒す。
その間にゆかは靴を履いてくれてて。
「あ、靴履いたんだね。よし、もうちょっと頑張ってよ？」
背中と膝裏に腕を入れて、そっと抱き上げ車に乗せる。
手を伸ばしてシートベルトを締めてあげて、
「大丈夫？」
声を掛けると、ウルウルした目でじっと見つめてくるから俺まで辛くなる。
急いで運転席に乗り込んで、できるだけ揺れないように、そっとアクセルを踏んだ。
焦っててすっかりLINEを送るのを忘れてしまい、信号待ちを利用して、
『今さっき出たからね〜』
短い言葉で出発を知らせる。
すぐに返事が来て、また信号待ちで確認すると、
『正面玄関に迎えに行くから、待ってて？』
って。
翔にぃってこういう時、ホント優しい。
もう返信はせず、慎重に病院へ車を走らせた。
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作者名：虹
| 作成日時：2018年12月7日 15時
