一難去ってまた一難 4 ページ5
智サイド
リビングに入ると同時に聞こえて来た和の泣き声。
何があったんだろうと、慌てて和室を覗くと、
「お、救世主！ちょっと和、お願いして良い？潤にいきなり叩かれたんだよ」
って、和を渡された。
和を抱き上げ、そのまま翔たちを見守る。
潤の両手を握った翔が、ゆっくりと話始めた。
「潤、和に何したの？」
「潤のパパ…」
潤のこの一言で全てを理解した僕だけど、ここは翔に任せておこうと、２人に意識を向けたまま、一端リビングに出る。
「和、どこパチンされたの？」
和の納得いかない気持ちを受け止めてあげないといけないからね。
ここ、と頬を擦りながら、
「和くん、な、もして、いの、…」
一生懸命、何もしてない、と訴える和。
「そうだね、和は何もしてないんだもんね。分かってるよ？
今、翔パパが潤に何で叩いたのか聞いてくれてるからね？
よしよし、もう泣かなくて良いよ？ここが痛かったんだね？」
和の左頬を撫でてあげながら、和室で叱られている潤を見る。
何度も『潤のパパ』と繰り返している潤に、
「そうだね、潤のパパだね。
だけど潤だけのパパじゃないよ？
それに叩くのはダメ。パチンてしたら和は痛いでしょ？」
それでも潤は納得する事なく、
『潤のパパ！』って(苦笑)
こんな時、感情に流されてしまってはいけない。
それを十分に理解している翔は、根気強く話を続けている。
潤は任せたよって目で伝え、僕は和の気分転換を図ることに専念する。
「さ、もう泣き止んで、朝ごはん食べよう。今日は何かな？」
抱っこのまま、２人でキッチンに目を向けた。
そんな僕たちに気付いたゆかが、
「今日はね、フレンチトーストだよー。和、大好きだもんね？」
って。
「やったね、和。朝から嬉しいね？お手々洗いに行って、食べる用意しよう」
そのまま洗面所に行こうとしたら、
「智にぃ、今朝のお着替え、すっごく早かったんだよ、和。
ぜーんぶ1人でできたし。いっぱい誉めてあげてね？」
って、教えてくれた。
「え、そうなの？偉いね、和。
おりこーさん！」
ちょっと大袈裟に誉めてあげると、片方の口角だけをキュッと上げて、照れ臭そうに微笑んだ。
ははっ、単純！
機嫌が直ったなと安心して、手洗いに連れて行く。
結局こんなことでバタバタしていて、ゆかの体調が悪いんじゃないかって思っていたのに、すっかり忘れてしまっていた僕。
この時、もっと気に掛けてあげてれば良かったのに…
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作者名：虹
| 作成日時：2018年12月7日 15時
