お腹が痛い(和&潤) 3 ページ34
翔サイド
はあ〜定時に帰れる予定が、
ナースの『ちょっと気になるんですけど…』から始まった診察、検査、治療などで3時間も残業することになった。
自分で症状を伝えられない子どもに代わって些細な変化をこうしてナースが教えてくれることで素早い処置ができるんだから有り難いこと。
だけど、今日みたいに完全に帰宅モードに切り替わってからの残業は正直言って凄く疲れる。
それでも治療が上手くいったから、そんな疲れなんて何処かに飛んでいったんだけど。
ナースステーションに置きっぱなししていた鞄を取りに行って、
「もう帰るけど大丈夫？」
最終確認をする。
3人のナースが口々に『大丈夫』『お疲れ様です』と言ってくれて、
「じゃ、帰ります。お疲れ様」
漸く家路についた。
エレベーターを待ちながらスマホを確認すると智にぃからメッセージが届いていた。
『和が下痢。胃腸炎かも…』
ん〜この季節に胃腸炎？
俺は踵を返してナースステーションに戻り、検査キットを手に取った。
「検査キットもらって行きまーす！カルテ入力は明日するんで！」
そう言い残して、再びエレベーターホールに向かう。
電話ではなくLINEだからそんなに酷い症状ではないのだろうと予想した俺。
それに"和が"ってなってたから潤やその他の家族に問題がないのなら食中毒の可能性も低い。
医者としての俺は、そんな風に大した病気じゃないと分析するけど、親としての俺は早く帰って診てあげたい、大丈夫かな？って心配が先に立つ。
逸る気持ちを抑えつつ家に帰り着いた俺を潤が笑顔で迎えてくれた。
ぎこちない足取りだけど、急いで歩いているのが分かる必死の形相で玄関まで来てくれた。
「ぱっぱー！」
「ふはっ、潤っ！ただいまー」
全く止まることを考えてないような勢いで俺に飛び付いて来た潤。
それを受け止めるこの瞬間に仕事の疲れは吹っ飛ぶ(笑)
「かじゅ、ぽんぽん、たい、たいのー」
「そう。潤は？潤はぽんぽん痛くないの？」
「じゅん、たい、な〜い！」
会話も成立するようになって、可愛さ100倍。
「和のぽんぽん、診てみようね？痛いの飛んでいけ〜ってしような？」
神妙な顔つきで"ウンウン"って頷く潤。
潤なりに凄く心配してるんだなってのが伝わってくる。
「ただいま。和のお腹どう？
下痢は何回した？水様便？痛みは酷い？」
「翔、急ぎすぎ(苦笑)
そんなに重症じゃないと思うから落ち着いて？」
「ははっ、ごめん」
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作者名：虹
| 作成日時：2018年12月7日 15時
