ある病室 ページ25
煉獄と手合わせしたきり、黒城とはめっきり話さなくなった。
というか、あいつに余計な気を遣わせたくねェし、迷惑もかけたくねェから、俺が会おうと誘わなくなった。
まあ、別に恋仲じゃねェしな。
しばらくすれば、俺のこの感情も消えるだろう。
前の任務の時に、応急処置で使うものを切らしたのを忘れていたため、不本意だが蝶屋敷に来て自分で作った切り傷を手当してもらった。包帯等ももらった。
胡蝶に、「ちゃんと来てくれるなんて、これは一体誰のおかげなのでしょう。」と姉によく似た笑顔で言われたが、その笑顔とは裏腹にあたかもこうなるよう仕組んでいたような言い方に俺はイラついた。
帰り際には、「柱の皆が不死川さんのことを応援してるのお忘れなく〜」と余計な事を言ってきやがった。
うるせェ。応援なんかもう要らねェんだ。
自傷に関しては、大方胡蝶が黒城に言ったんだろ。
まぁ、ちゃんと言う通りにしねェと黒城もうるさそうだからな…って、
「何でアイツのこと考えちまうんだよォ。」
こんな恋情もってたって俺が辛いだけなのによォ。
むしゃくしゃしながら蝶屋敷を歩いていると、ある病室から騒ぎ声がした。
少しだけ会話が耳に入ってくる。
「俺、やっと捕まえられると思ったのに、本当に速いですね!」
「俺はまだまだ全集中常中ができてないよぉ!いつまで経っても触れないィィ!」
「俺はもう少しで完璧だ!もう少ししたらお前に勝つ!!」
男共3人の声。うち1人は声を聞くだけでも腸が煮えくり返るほど嫌いな隊士。
何話してっか知ったこっちゃねェ。
特に気にせずそのままその病室を通り過ぎた時だった。
「こら伊之助!Aさんに向かってお前はやめるんだ!」
ピタッ
俺は足を止めた。
…あ?
Aさん?
黒城の事か?いや、この病室の中ににいると思われる女はただ同じ名前なだけかもしれねぇ。
「もういいのよ炭治郎君。私は慣れたし!」
黒城だった。
なんでお前がコイツらとつるんでやがる。
そして、何気安く下の名前で呼ばれてやがる。
よくねェことかもしれないが、しばらく俺は息を潜め入口付近でその部屋の中にいるヤツらの会話を聞いていた。
全部聞きとれるわけではなかったが、コイツらと楽しそうに話したり、大きく笑ったりしている黒城の声が聞こえる度に、俺の中にドロドロとした何かがこみ上げてきた。
俺はいてもたってもいられず、いつの間にか体が動いていた。
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ゆみ - わたしもさねみさんもくまさんも凪子さんのこと見守てるから (2022年4月25日 23時) (レス) id: 3ad59a45e6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ - 泣いてくれてありがとう凪子さんわたしもだいすきなさねみさんとここで恋仲になれてうれしいもん (2022年4月25日 23時) (レス) @page47 id: 3ad59a45e6 (このIDを非表示/違反報告)
さらりとクマ(プロフ) - 凪子さん» え?!あ?!泣かれましたか?!お目目腫れてませんか!?ちなみに作者は見聞録の弐を読んで泣いてしまいました同じですね!(?)明日会う人に心配にされないようしっかり目元のケアをなさって下さい!!!お読み頂きありがとうございます! (2021年2月4日 23時) (レス) id: 2dfbebf58e (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - 泣いてしまった!!実弥さんの愛の深さがたまりません! (2021年2月4日 20時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
さらりとクマ(プロフ) - tauorgemさん» コメントありが…えええ?!お泣きになられた?!確かに、思いのすれ違いについては頑張って書いた記憶があり、それで心を揺らして頂いたなんてとても嬉し…いや!目を腫れさせてしまってはだめですね?!どうかおめめをしっかり冷して下さいませ!! (2021年1月18日 23時) (レス) id: 2dfbebf58e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さらりとクマ | 作成日時:2020年10月3日 8時