本気.29［マギ］ (ページ1)

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「……ですが、「フェニクス」も外されました。兄王様…私たちの失態ですね。」

Aは太ももの上に手を置いて、ぎゅっとキュロットスカートを強く握った。
不甲斐ない。申し訳ない。もっと、もっと自分に力があったのなら。

「紅炎様。白龍皇子が「勅令」を宣布しました。」

「「勅令」だと？して、その内容は？」

紅覇が後からはいってきた紅炎の眷族に聞く。

「は…それが、おそれながら……」

『逆賊紅炎を討て

練紅炎の地位は国賊たる練紅徳、並びに練玉艶より与えられた不当なものである

バルバッドの地で不当に私兵を蓄える練紅炎を即刻討つべし

これに逆らう者もすべて同様に処刑する。』

紅覇は立ち上がり、机に手を着いて怒りと悔しさなどの色んな感情から顔を赤くした。
Aは俯き、自分の手をぎゅっと握った。

「…白龍は、本格的に国を割る気ですね。

彼は、己こそが次の正統な皇帝(おう)だと宣言したのです。そして、大多数がこれに従わぬも承知の上でしょう。すでに煌帝国の全兵力の八割が兄王様への帰順を表明しています。」

「紅炎様……紅炎様も、皇帝としてお立ちください！俺は、白龍ではなく紅炎様がいい！他の連中もみんなそう思ってるに決まってる！」

「しかし、血統の正当性だけをかんがみれば、白龍皇子の方が皇帝に相応しいのではないか？」

「！！」
「炎彰殿、なんてこと言うんですか!!」

「いいえ、血筋の正当性が問題ではありません。」

「え？どういうことですか？紅明様…」

「そうだ。血筋の正当性や、皇帝になりたいかどうか、そんなことはまったく問題ではない。皇帝(おう)にしてはならない王の器が、ただ存在する。「シュバリエ」の貴様になら分かるはずだ。」

Aは顔を上げることが出来ないまま、俯いて弱々しく頷いた。

「皆、聞け。Aもだ。」

顔を上げろと言われているようで、Aは顔を上げた。

「俺が、白龍を追い詰めてしまった。玉艶よりやつをはるかに下に見ていた。白龍を王に立て、支えることを諦め…かといって御し切れず、ならば殺してしまうべきだったのに……

そこをしなかった、俺の失態だ。

だが、俺は白龍に下るつもりは、ない。」

「「!!!」」

「…では、戦うのですね。」

「…すまない。」

「…ついて行きます。あなたにどこまでも。」

紅明、紅覇眷族たちは立ったまま拳を手のひらで包み、敬意を示した。

1人、Aは椅子に座ったまま目を瞑り辛そうな顔をしていた。