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「で?なんで遊杏がこんなとこにいんの?あとその隣の薄汚い子供は誰なの?」
紅覇の馬車の部屋はとても豪華だった。
真ん中の椅子に座りながら、女たちに扇がせ、腕をふかせ、飲み物を持たせながら紅覇は前に座るアラジンとAを見下ろす。
「先程同乗してきた者です紅覇様…」
「いやそれはどうでもいいけど……おい遊杏、そろそろ顔上げろよ。」
ビクッ、とAは肩を揺らして、おずおずと顔を上げた。
「僕、昔からおまえの顔だけは好いてたもんね。てかまた泣いたの?汗?どうでもいいけど、また拭いてやってよ。」
紅覇がそう命令すれば、遣いの女性が「失礼します」と近づいてきて清潔な布で汗を拭ってくれた。
(「お前のせいだよ」なんて、いえねえ……!!)
この冷や汗は全て貴方のせいなのである。
優しく汗を拭われた後、Aは顔を上げたまま紅覇を見上げられる視線をずらす。
すると紅覇は「ああっ、紅覇様、」と止める声も無視して立ち上がると、Aの前に腰を折って彼女の顎を持ち上げて無理やり視線を合わせた。
「昔みたいに普通に話しかけろよ。ビクビクしてんのいちばん嫌いなんだよ。」
「アッ、ハイ。」
紅覇はガタンッ、と椅子に座って、「別に僕怒ってないし〜」と手をプラプラ振りながら言った。
「そりゃお前があそこ死ぬほど嫌いなのなんて、見てたらわかるしぃ〜
けど、旅から戻らないで家出とかさぁ、一言くらいくれても良くな〜い?
「す、すみません……」
「…でも、もうお前に「紅覇様」って呼ばれることも無くなっちゃうんだね。」
頬杖をつきながらそう少し悲しそうに見下ろす紅覇に、Aは首を傾げると、ハッと気がつく。
「まあ確かに、この忙しい時期にお前を取り戻しに行くのを続けるのも無駄だって判断だからね〜、金属器使いとかお前以外にもいるし、まあ諦めたんだろうけど。」
白龍が言っていた。もう国から「遊杏」は消された、と。
「だから安心しなよ、別に僕はお前を取り返そうとかそんな野暮なこと考えてないから。」
眉を下げてニッと笑う紅覇に、Aは感動すると、「ありがとーございます」と深く頭を下げた。
そして「じゃあ、」と顔を上げて笑う。
「もう紅覇様って呼ばなくてもいいんだし、敬語も要らないよね?」
「…はっ?」
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氷空音(プロフ) - ナギさん» 読み進めていただけたら分かりますがヤンデレは治ります!あと、第139夜はこの作品では飛ばしているのですが、呼び方を間違えてしまったところはどこだったでしょうか?すみません!見つけるのが下手で…見つけ次第直させて頂きたいのですが💦 (2022年10月26日 15時) (レス) id: a1f76e7cbb (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 第139夜ですが、紅玉は紅覇の義姉ではなく、歳が同じ義妹で紅玉と呼んでいますよ! (2022年10月26日 7時) (レス) @page23 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 白龍くんのヤンデレは治りますか?まだアニメで放送されていないシンドバッドを倒すところではアラジン達と共に戦っているので治る気がします。 (2022年10月26日 7時) (レス) @page12 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
氷空音(プロフ) - サラさん» わーい!!!!!!とっても嬉しいですありがとうございます頑張ります😭😭❣️ (2022年3月27日 18時) (レス) id: 5e2c75e263 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 把握しました!私この小説ほんと見ててなんか微笑ましくなってめっちゃ好きなので、今回頑張って絵描かせていただきます!これからも頑張ってください!応援してます! (2022年3月27日 18時) (レス) id: 98face5f6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷空音 | 作成日時:2022年3月25日 16時