来来.39［マギ］ (ページ27)

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記憶はこの世界から消えたのである。

誰も彼女を、Aという女を思い出すことは出来ない。

そしてシーシャも体を譲り、意識は、「存在」は今現在Aの奥底に隠れている状態である。
イラストソフトでいう「レイヤー」の上下と同じで、現在Aが上(表)に出ているため、下(裏)のシーシャは確認できる場所にない。

そのため、シーシャの事も彼らは思い出すことが出来なくなった。

もう、何も残っていない。彼女を、彼女らを証明するものは、ついにこの世から消えたのだ。

＿A、彼女こそが、本当の特異点だった。

原作は捻じ変わった。

全てを変えた彼女こそが特異点であった。

しかし誰もそれを知らない。

彼女は誰も自分のことを覚えていないこの世界で、自分が変えた未来を戻さなければいけない。

愛した人たちが自分を忘れても。

1度、愛してしまった世界だから。

「いいんだよ、」

「！」

俯いていた彼女は顔を上げ、微笑んだ。

美しく儚いその笑顔を、"初めて見た"アリババは、目を見開いた。

(いい？なら、なんで……

なんでそんな、泣きそうな顔で笑うんだ!!)

「君は、」

アラジンがなにかを言いかけると、彼女はそれを手で止めて、もう片方の手でスッと剣を掲げると、

ズン、

ズシャアアアアッ！

ダビデの背中に突き刺し、氷を張った。

(この魔法、やっぱ見た事がある!!

やっぱり僕は、僕たちは、彼女を知っているはずなんだ……！)

彼女はスゥっと肺いっぱいに冷たい空気を吸い込むと、こちらを振り返り微笑んだ。

「行こう。アラジン。アリババ。白龍。ジュダル。」

「「!!!!!!」」

「愛した世界を守るための、運命との戦争だ！」

「ッ、『ソロモンの知恵』!!!」

アラジンは誰かも分からない女の言う通り、ソロモンの知恵を使用した。