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「…分かりません。でも、伊沢さんなら大丈夫だと思ったんです
この遺書を、託しても
…なのでもし、私が死んだら、拓朗さんに渡してくれませんか」
「すみません、こんな重要な役を押し付けてしまって」と申し訳なさそうにする彼女に、もしかしたらこれが最後の願いなのかもしれないと思うと、断れなかった
俺なら、大丈夫、か
「…そっか。分かった。俺が責任を持って、あいつに渡すよ」
「ありがとうございます」
すっかり寝たきりになってしまっている葉月ちゃんは、首の骨だけを使って礼をする
背もたれを起こしてほぼ座る体制になると、彼女はサイドテーブルに置かれた便箋とシャーペンに手を伸ばした
それくらい俺に頼れば良いのに
こんな時まで頑張る葉月ちゃんを目に焼き付けて、正面の机に便箋とシャーペンを移動してあげると、また眉を下げられてしまって
…川上が、「まだ信じられない」と言っていた理由が分かる気がする
いざもうじき死ぬかもしれないと突き付けられても、いっこうにその事実は喉を通ってはくれない
だって、彼女は目の前に居る。いつでも触れることができる距離に居る
こんなにも近くに居るのに、その日常が変わってしまうなんて、今の俺では到底信じられそうになかった
「…すっかり、力が入らなくなってしまってますね」
「俺が代わりに書こうか？」
「いえ、大丈夫です。最後くらい、頑張りたいので」
川上の下の名前から綴られていく、ガタガタで、細くて、お世辞でも綺麗とは言えない字
それでもその文からは心からあいつを思う気持ちがひしひしと感じられて、本人でもないのに、鼻が痛くなる
「伊沢さんの字って、紀伊山地の伊に、軽井沢の沢であってますか？」
「合ってるよ。ていうか、チョイス独特すぎない？」
「へへっ、きっと、いつか行きたいねって拓朗さんと色んな所調べた影響ですね」
「……なぁ、葉月ちゃんは、さ」
川上の話をする時の顔が、葉月ちゃんの話をするあいつの顔と全く一緒で
「川上のどんなとこに惚れたの？」
もしこれが最後になってしまうのなら、最後に、聞いてみたかった
振り絞ったつもりの問い。でも彼女は手紙を書く手を止めることなく、目線はそのままであっさりと言い放つ
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三宵 - マジで、本当に、号泣しました。この作品を作ってくれてありがとうございます。合掌もんです。本編では葉月ちゃん死んじゃうのに、番外編？では奇跡的に完治してくれた話も作ってくれて本当にありがとうございます！私もハッピーエンド大好き馬鹿です。 (2月25日 10時) (
レス) @page50 id: bf60c8d8c1 (このIDを非表示/違反報告)
s.u - 本当に、感動しました…！私は文章力がないので、本当に羨ましいです…。最後の方は涙でいっぱいでした。お疲れ様でした！ (2021年9月25日 12時) (レス) @page50 id: 4835169485 (このIDを非表示/違反報告)
限りなく1に近い4。 - あの、本当に、まず一つこの作品に出会わせていただけたことに感謝しています、一気に読ませて頂きました。最終話に近づくにつれ涙がボロボロ出てきて、こんなに作品へ感情移入したのは本当にいつぶりだろうってぐらいです。完結おめでとうございます。最高でした…！！ (2021年9月15日 0時) (レス) id: eeb9744d1e (このIDを非表示/違反報告)
わぁわぁ(プロフ) - 読ませて頂きました、自分が涙脆いのか最後の方ボロ泣きで読めなかったです…めちゃくちゃいい話でした！ループします… (2020年11月28日 21時) (レス) id: ed6a811a98 (このIDを非表示/違反報告)
花蓮 - もの凄く良いお話ですね…。涙が溢れました。川上さんに本当にそんな過去があった気がして……。なかっとしても同じような過去を抱えていると…。もう書くことが言葉に出来ません。すみません。ただ、本当に感動しました。 (2020年9月27日 17時) (レス) id: b11d0cfa2b (このIDを非表示/違反報告)
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