【Q|K】愛したい【kwkm】

関係 ページ8

彼との関係は、その日限りで終了した


結局夜の営みをすることなく先に私が寝てしまい、次の日の朝もそういうことは一切無かった

代わりに男性の独り暮らしらしい朝食をご馳走になって、あの日から早一ヶ月

私は、彼の事をなにも知らない

知っているとしても、優しくて、かっこよくて、私より年上、少し話し方がなまっている、という事くらいで

名前も、連絡先も、どんな仕事をしているのかも、何歳かも知らない

…でも、それで良かったのかもしれない。今更未練なんて持っても、仕方ないから


「…憂鬱だなぁ」


空は快晴の筈なのに、気分は晴れ晴れ、という訳ではなくて

今日も朝から、機嫌の悪いお母さんに怒られてしまった

昨日の夜は、泥酔したお父さんに殴られてしまった

あぁ、本当に……神様は、なんて不平等なのだろうか

思わず、泣きたくなる。駄目だ、こんな道端で泣いたら


『気まぐれ』


…こんな風に泣きたくなると、いつも思い出すのは、名前も知らないあの男性の声

あの日のように、笑いかけてほしい

あの日のように、優しく頭を撫でてほしい

あの日のように……声を、かけてほしい


…なんて、無理に決まってるのに、願ってしまう


「…また、か…」


学校につくと、机いっぱいに寄せ書きされた悪口

あぁ、また、憂鬱な気分になる

彼が折角少しだけ満たしてくれた心が、また、空っぽになってしまう

クスクスと笑う声。きっと私が居なくなっても、彼等はなんとも思わないのだろう

消すのすら億劫に感じてしまって、その状態のまま席につく

今日も始まる。いつもと変わらない、憂鬱な一日が


「っえ、なにこれ？！」


―――そう思っていた


聞いたことがない声。そこに立っていたのは、やっぱり知らない人で

でも見た目からして、高校生ではない。新しい先生、かな？


「ちょ、君、え？大丈夫？？」

「……あ、私、ですか？」

「君しか居ないでしょ！！」


感情の起伏が激しい人だな。あの時の彼とは正反対

…こんな時でも、彼と比べてしまう私は、既に未練をもってしまっているのだろうか

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