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たったそれだけのつもりだったのに、何故か気づいたときには、彼女に唇を奪われていて
「…私を、抱いて、くれませんか」
気づいたときには、そんなお願いをされていた
戸惑った。所謂パパ活というやつかと思って、自分の体は大切にしろと言っても、そうじゃないみたいで
女の子は、俺の服を掴んで、藁にでもすがるように、必死にお願いしてきて
その姿に、少し心が、揺らいでしまった
「…立てる?」
そう聞いた俺に、彼女は掠れた声で「立てます」と返してくれる
この時までは多分、本気で、抱いてしまおうなんて思っていたと思う
でも、なんとなく勝手に恋人繋ぎをした俺に嫌な顔一つせず、隣を歩くこの子を見ている内に、やっぱり駄目だなと僅かに残っていた理性が止めてくれた
結局連れてきたのは、俺の家。確か家出している子を勝手に匿ったら誘拐罪になるとかならないとか
まぁ、捕まったらその時だ。そうなったら潔く諦めよう
「はよおいで」
上がるのを躊躇っているのか、なかなか来ない彼女をそう言って手招きする
するとようやく靴を脱いで、俺の後を追ってきた
なんか、雛みたいやな
濡れた服のままだと風邪をひくよなと思い、着替えを探しに行くついでに風呂に入るよう促す
着れるサイズあるかな、と考える俺の思考を止めたのは、か細い「あ、あの」だった
「ん?」
「…な、んで…そこまで、してくれるんですか…?」
なんで。それは、俺もよく分かっていない
赤の他人の子にここまでする必要はあるのか
なぜあの時俺は声を掛けてしまったのか
考えれば考えるほど出てくる疑問。そう、理由なんてない
「気まぐれ」
なんとなく、この子を助けたくなった。ただそれだけ
俺が寝室に行っている間にお風呂に入ったのか、リビングに戻ってくると彼女の姿が消えていた
出てきたとき着替えがないのは流石に困るだろう、と躊躇いつつも脱衣所に向かう
「ッぅ…うぅッ…ッ…やだぁ…ッ」
その時、僅かな水の音と共に聞こえてきた、震えたあの子の声
泣いている。瞬時にそう理解できたが、今の俺には掛ける言葉が見つからなかった
無責任な言葉は、余計に傷つけてしまうと思ったから
風呂から上がった彼女の目は予想通り赤く腫れていて
その時何故かその姿に、酷く胸が締め付けられた
―――守ってあげたい、と
「…風呂入ろ」
きっとこの感情は、風呂に入ればすぐにでも消え去ってくれる
…筈
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白菜(プロフ) - すずどらさん» こちらこそコメントありがとうございます。とても励みになります。誰かの心に響くような話を書くことができて良かったです。更新頑張ります (2019年12月15日 16時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - あやかさん» こちらこそコメントありがとうございます。誰かを好きになるって大変なんだな、と書いた本人ながら思ってます。これからも切ない恋の模様を見守って頂けたら幸いです (2019年12月15日 16時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 僕の推しは川上さんなので凄く嬉しかったです。せつない作品で、とても良いな、と心に染みています。また、続きを楽しみにしてます。頑張って下さい。 (2019年12月15日 10時) (レス) id: 66850163cc (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - せつない作品をありがとうございます。現在さめざめと泣いております…。続きをお待ちしております。どうぞよろしくお願いします。 (2019年12月15日 0時) (レス) id: 7a1dedd698 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Qさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます!!無料世界一周旅行出来るくらいの作品が書けているかはまだまだ自信ないですが、そう言って貰えると本当に嬉しいです!!Qさんもインフルエンザにはお気をつけて! (2019年12月9日 14時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
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