検索窓
今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:195,356 hit

ページ6

川上side


ベッドで寝て良いと言ったのに最後まで譲らず、ソファーでスヤスヤと眠る女の子

今更ながら、俺はとんでもないことをしてしまったのかもしれない、なんて後悔が浮かんだ





「はーいじゃあ今日の撮影はここまで」


福良さんの掛け声で動き出す彼等に習って、俺も画角から外れる

今日はこれと言ってすることはない

締め切り間近の記事は提出したし、後輩たちの校閲も終わった

つまり、後は帰るだけということ


「おぉ、雪じゃん」


鞄に必要な物を詰めて背負う。と、須貝さんがそんな事を呟いた

「ほんとだ」「天気予報当てになんねー」なんて声に釣られて俺も顔をあげる

一面雪景色、というわけではなかったが、確かに白い玉がゆっくりと地面に落下していた

最悪だ。正直最初の感想はそれだった

天気予報を当てにしてしまった俺は、傘を持ってきていなかったからだ

積もる前にはよ傘買いに行こ


「じゃあお疲れさまでしたー」


お疲れ、の声を背にオフィスを出る

エントランスを抜けて外に出ると、早くもうっすらと積もっていた

流石、雪が降るだけある。かなり空気が冷たい

思わずかじかむ指に息を吐くと、手袋の存在を忘れてしまったことも思い出した


あぁ全く、今日はついてない


「…風邪ひくよな、あれ」


本当に、ついていない


傘を無事に買い終え、いつもの帰路を辿っていると視界の端に見慣れない何かが入り込んだ

何かの正体は、傘もコートも手袋もなにもない、制服の女の子

家出だろうか。冬を選ぶのはちょっと失敗なような気もするが

なんて冷静にそんな事を思いながら、俺も周りに習うように通り過ぎようとする


「……生きたい…」


…その四文字が聞こえるまでは、確かに通り過ぎようとしていたんだ


「…君、こんなとこでどしたん?」


気づいたら俺は、自身のビニール傘を彼女の方に傾けていた

これはちょっとした、気まぐれだ

深い意味なんて、特にない


顔がこちらを向く。その子は、俺が想像していたよりも、おっとりとした可愛らしい子だった

もっと、なんというか…ケバい子を想像してしまったのは、不可抗力だと思いたい

俺の姿が映る黒い瞳。その瞳が、何故か見る見るうちに膜を張っていく

やがてその膜は、色白な頬を伝って、薄く積もった雪の上に落ちた


「え、ちょ、泣くなって」


濡れることも気にせず膝を地面につけて、背中を擦る

.→←。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (129 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
313人がお気に入り
設定タグ:QuizKnock , QK   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

白菜(プロフ) - すずどらさん» こちらこそコメントありがとうございます。とても励みになります。誰かの心に響くような話を書くことができて良かったです。更新頑張ります (2019年12月15日 16時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - あやかさん» こちらこそコメントありがとうございます。誰かを好きになるって大変なんだな、と書いた本人ながら思ってます。これからも切ない恋の模様を見守って頂けたら幸いです (2019年12月15日 16時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 僕の推しは川上さんなので凄く嬉しかったです。せつない作品で、とても良いな、と心に染みています。また、続きを楽しみにしてます。頑張って下さい。 (2019年12月15日 10時) (レス) id: 66850163cc (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - せつない作品をありがとうございます。現在さめざめと泣いております…。続きをお待ちしております。どうぞよろしくお願いします。 (2019年12月15日 0時) (レス) id: 7a1dedd698 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Qさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます!!無料世界一周旅行出来るくらいの作品が書けているかはまだまだ自信ないですが、そう言って貰えると本当に嬉しいです!!Qさんもインフルエンザにはお気をつけて! (2019年12月9日 14時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白菜 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年12月7日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。