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「…川上さんは、私が今からどんなことを言っても、受け止めてくれますか…?」
貴方が好きになってくれた奴には未来が無いと言っても、受け止めてくれますか
「受け止めるよ」
なにか深刻な雰囲気を感じ取ったのか、さっきまで浮かべていた笑顔を封じて、彼は頷く
その姿に肩の荷が降りた気がして、取り敢えず彼の手を引いて道から少し外れる
そして、数回の深呼吸を繰り返し、意を決して私なりの精一杯の言葉を吐き出した
「…私も、川上さんの事が好きです…大好きです…でも、私は…
―――近い将来、死ぬんです…」
川上さんの目が1テンポ遅れて見開かれていく
言っている意味が分からない、という様なその目に、もう少し細かく病気の事を話す
発見されたときには既に手遅れだったこと、あと一年も生きられないであろうと言われたこと、その他の事も、細かく
勿論担当医の先生には、余命宣告はあくまで過去の平均だからそこまで気負いすることはない、と言われたが
…日に日に悪化していく病状に、自分の命が長くないことは、自分がよくわかっていた
「…だから、川上さんは、私とは関わらない方が良いと思います」
どんなに頑張っても、貴方を悲しませてしまうことに変わりないから
「川上さんにはきっと、私よりいい人が」
「―――俺は、葉月さんじゃないと嫌だ」
「っ…」
再びあの真っ直ぐな目が、私を射ぬく
「…正直、まだ信じれないし、信じたくもないけど…
でも俺は、たとえ葉月さんが居なくなるとしても、ずっと葉月さんの傍に居たい
もう長くないなら、尚更、一秒でも長く一緒に居たい」
ぎゅっと手を握って、安心させるようにそう言葉を並べる川上さんに、視界が歪む
誰にも言ってもらえなかったその言葉に、空っぽの胸が一瞬にして満タンになる
「っわた、しも…川上さんと、ずっと一緒に居たい…っ、しにたくない…」
「葉月さん…」
ついには泣き出した私を、川上さんは優しく抱き締めてくれた
一度溢れた涙を止めるのはなかなかに難しくて、彼のコートが濡れるのも気にせずただただ嗚咽を漏らす
残酷だ。神様は、本当に、本当に、残酷だ
彼をこれからもずっと愛したいというたった一つの望みすらも、叶えてくれないのだから
私はただ…誰かに、愛されたかっただけなのに
誰かを…愛したかっただけなのに
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白菜(プロフ) - すずどらさん» こちらこそコメントありがとうございます。とても励みになります。誰かの心に響くような話を書くことができて良かったです。更新頑張ります (2019年12月15日 16時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - あやかさん» こちらこそコメントありがとうございます。誰かを好きになるって大変なんだな、と書いた本人ながら思ってます。これからも切ない恋の模様を見守って頂けたら幸いです (2019年12月15日 16時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 僕の推しは川上さんなので凄く嬉しかったです。せつない作品で、とても良いな、と心に染みています。また、続きを楽しみにしてます。頑張って下さい。 (2019年12月15日 10時) (レス) id: 66850163cc (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - せつない作品をありがとうございます。現在さめざめと泣いております…。続きをお待ちしております。どうぞよろしくお願いします。 (2019年12月15日 0時) (レス) id: 7a1dedd698 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Qさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます!!無料世界一周旅行出来るくらいの作品が書けているかはまだまだ自信ないですが、そう言って貰えると本当に嬉しいです!!Qさんもインフルエンザにはお気をつけて! (2019年12月9日 14時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
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