初詣 ページ38
今回はきちんとマフラーを巻いて、手袋もして、コートも着て、カイロも常備してきた
両手に収まるスマホには、初詣一緒に行きませんか、と書かれた吹き出し
…本当は、断ろうと思っていた
伊沢さんの時のように苦しむ姿を見せてしまうかもしれないと、彼に、悲しい顔をさせてしまうかもしれないと思ったから
けれどやっぱり、会いたいという気持ちには敵わなくて
結局私は、彼と決めた待ち合わせ場所にこうして立っている
「…ほんと、最低だなぁ…」
白い息と共に吐いた言葉は誰に拾われるでもなく、空に消えていく
スマホをポケットに仕舞いながらそれを見届けて、マフラーで口許を覆う
彼に巻いてもらってから、なんとなく同じ物を使ってしまっている、この青いマフラー
何度も洗っているのだから、彼の香りなんてとうに無くなっているのに
どこか、川上さんの香りがする気がして…
「葉月さん」
「あ、川上さん」
待ち合わせの十分前。今日初めて見る色のマフラーをなびかせて現れたのは、数週間ぶりに見る、ずっと会いたかった人
まだ会っただけなのに、心臓は既にバクバクと鼓動を速める
聞こえてないと分かってはいるけど、もしかしたら聞こえてしまうんじゃないか
そんな無駄な心配をしてしまうくらい、心臓は大きく脈打っていた
「久しぶり」
「お、お久しぶりですっ」
「葉月さん、ちょっと痩せた？」
「…あー、かも、しれないです」
痩せた？と首を僅かに傾げる彼はきっと、そんなに深く考えて言ったわけではないのだろう
だけどそんなちょっとしたことでも、ヒヤッとしてしまう
確かに最近は特に体重が減少している。でもそれは、病気のせいだ
徐々に変化していく自分に、死が近づいている事を忘れるなと言われているようで
彼にもそれがバレているんじゃないかと、不安になる
「じゃあ、まずどこ行く？」
手を繋いだ事でより速さを増した心臓の音を聞いていると、そう聞かれる
が、生憎私は初詣というものに詳しくないので、普通の人が何をするのかあまりよくわかっていない
まずは……おみくじ、とかだろうか
いや、もしかしたら参拝かもしれない
それとも、お守りを買うのが先？
「そんな悩むことでもないやろ」
「す、すみません…川上さんは、どこからが良いですか…？」
「俺？…おみくじ、とか？」
「じゃあ、おみくじ行きましょう」
川上さんの意見に乗ると、彼は「別に合わせんでも良いのに」と困ったように笑った
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白菜(プロフ) - すずどらさん» こちらこそコメントありがとうございます。とても励みになります。誰かの心に響くような話を書くことができて良かったです。更新頑張ります (2019年12月15日 16時) (
レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - あやかさん» こちらこそコメントありがとうございます。誰かを好きになるって大変なんだな、と書いた本人ながら思ってます。これからも切ない恋の模様を見守って頂けたら幸いです (2019年12月15日 16時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
すずどら - 僕の推しは川上さんなので凄く嬉しかったです。せつない作品で、とても良いな、と心に染みています。また、続きを楽しみにしてます。頑張って下さい。 (2019年12月15日 10時) (レス) id: 66850163cc (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - せつない作品をありがとうございます。現在さめざめと泣いております…。続きをお待ちしております。どうぞよろしくお願いします。 (2019年12月15日 0時) (レス) id: 7a1dedd698 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Qさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます！！無料世界一周旅行出来るくらいの作品が書けているかはまだまだ自信ないですが、そう言って貰えると本当に嬉しいです！！Qさんもインフルエンザにはお気をつけて！ (2019年12月9日 14時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
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