君のいる朝 02 ページ6
「おい」
「ぴゃっ?!」
「……猫か、お前は」
過剰なまでに跳ね上がるAに狂王は目を眇める。よほど集中していたか、あるいは落ち込んで自分の世界に没入していたか。視力のなかった頃のほうが気配には敏感だったろう。
ーーーーけれど。
「くー、おはよう」
しっかりとこちらを見上げて向けられる笑顔に比べれば、瑣末なことだ。
「ああ、おはよう」
返事をすれば、瞬く間にぱぁと顔色を明るくするAに、エミヤも口元を緩める。
「君は本当にこの狂王が好きだな、親子のようだ」
「おとうさん??」
「やめろ」
ぎ、と眉を寄せると、エミヤはしまったというように咳払いをした。Aは不思議そうにエミヤを見上げる。
英雄に親子や男女関係の逸話は付き物だが、中でもクー・フーリンは息子を殺している。父を連想する単語を聞くのはあまり良い気分ではない。
「まぁなんにせよA、君は小さい。もっと食べて、大きくならないとな」
自然と話題を変えた弓兵は、再びAへの指導に入った。何をしているか聞きそびれた狂王は、カウンターから見ていることにした。
Aが料理をはじめたきっかけはだし巻き玉子だ。エミヤ手製の、たっぷりの出汁がじわりと染み出すだし巻き玉子は優しい味わいで、どのサーヴァントにも人気の1品だった。例に漏れずAもその味に感激し、これが作りたいと直談判したそうだ。
エミヤの性格上断ることは無いだろうと微笑ましく囁かれていたが、その日の夕方には厨房に椅子が運び込まれ、小さなAでも料理ができるように準備されていた。
料理の初歩は、器具の扱いと姿勢だとエミヤはAに説いた。立派な牛刀に触れさせながら、名称や種類、手入れに至るまで、丁寧な説明を施す。
見るもの全てがはじめてのAには、よほど記憶に焼き付いたらしい。
その日のこもりうたは、包丁の説明を即興で歌にしたものだった。
ここで露見したのは、名前は歌唱に関しては才があるが、作曲に関しては悲惨ということだ。寝れたものではなかったが、Aが楽しそうなので目を瞑って文句は飲み込んだ。
エミヤがAの割った卵を菜箸で混ぜていることから、今日はいよいよ実践といったところだろうか。
卵の黄身が潰れながら撹拌されていく。Aは目を輝かせて見つめる。
確かに同じ動作でも、エミヤがすると別物だ。洗練されている。
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Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時