朝と君と待雪の花 12 ページ42
願いとはーーーーもっと、穏やかなものだと思っていた。こんなにも苦しくて、ままならなくて、鮮やかなものだなんて。
「クー……」
喘ぐように名を呼ぶ。すぐにまた重ねられる距離で、彼はわたしを見た。おそれずに告げる。
「あなたが、いい。ぜんぶ、あげる。だから」
「……いいだろう」
彼の唇が、鼓動する肌に落ちる。
「お前の心臓、この俺が貰い受ける」
だから最後まで安心して生きてろ。付け加えられた言葉に、Aは何度も頷く。
(こっちの方が、いい)
一緒に死んでやると言われるよりずっと、この生に意味を見いだせる。彼がいてくれる最後に向かって生きられる。幸せすぎて、夢のよう。
(すきよ)
感謝と、慕情を込めて、今度はAから贈る。ちう、と奇妙な音がして、どうも彼のしてくれる行為とはかけ離れているようで、少し恥ずかしい。
彼はく、と喉を鳴らす。ひどく、楽しそうに。
「なんだ、もう終わりか」
「きゃ、っ」
身体をシーツに押さえつけられて、見下ろされる。大きな手に、それほど力は入っていない。けれど暴れてももがいても、きっと逃がしてくれないだろうと思った。
「A」
聞いたこともない声が呼ぶ。手や、尾が、頬や体の線をなぞる。服がたくし上げられそうになって慌てた。
「クー……っ、みえちゃう!」
「いやなに」
首筋に吐息がかかる。
「お前の裸でも見ればはっきりするだろうと思ってな」
「んみゅっ?!」
はだか。裸。すっぽんぽん。単語がぐるりと脳をまわって、Aは思い切り頬を赤らめる。
「見る、だけ?」
「……先を望むなら」
「さき?」
「……これの先だ」
ちぅ、と、鎖骨に痒みにも似た痛みが走る。見下げると、肌がぽうと赤くなっていた。
「なんで、ここにするの?」
「……虫除けと、単に俺が楽しい」
「くー、楽しい?」
「ああ」
「じゃあいいよ」
もっとしても、いいよ。
小首を傾げてAは手を伸ばす。狂王はしばし反応をに遅れた。
縫い止めた幼い身体を見下ろす。少女は無抵抗のまま微笑んでいた。
「……知らないくせに煽るな、たわけ」
「じゃあ教えて」
「……まだ早い」
少女の無邪気さに白旗をあげたのは狂王の方だった。たじろぐ狂王にAは不思議そうに瞬きする。その様子に、僅かばかり息をついた。
(危ねぇ)
恥じ入る様子が面白くて興が乗ったが、性の知らぬ真っ白い身体に、何をしようとしていたのだろう。
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作者「アーッぶな……」
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Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時