検索窓
今日:9 hit、昨日:5 hit、合計:54,579 hit

君のいる朝 01 ページ5

クー・フーリン【オルタ】の目覚めは決して遅くない。というのも、眠りが浅いのだ。バーサーカーというクラスで現界したからかの因果は定かでないが、戦士というものは眠らない。常に神経が尖っている。

ーーーーだから昼頃に目が覚めるというのは異常事態だ。

オルタは僅かに人の気配とぬくもりの残る隣を、ぼうと眺めていた。しっかり眠り休んだ脳みそというのは、覚醒してすぐにはろくに働かないらしい。体感するまでわからなかったが、なるほど、寝台から出たくない気分にもなる。

ごそごそと布をめくれば、残った熱でずいぶん可愛らしい柄のタオルケットが温められていた。体温の低いオルタを心配してのことだろう。あの幼い子どもは見た目以下の人生経験しか経ていないのに、時々、こちらが驚くほどの細やかな気遣いを見せる。
気持ちを無駄にしないためにも渋々、そのタオルケットを背に羽織り、オルタは起き上がった。

今日も今日とて種火集めだ。オルタの火力は攻めるが最大の防御という脳筋な戦術のマスターに重宝されている。この時間ならもう既にマスター達は向かったあとだろうが、だからといって休息日にはならない。このカルデアの慢性的サーヴァント不足は深刻だ。交代を言い渡されることは明白だった。

戦えと言われたならそうする。交戦を求めはするが、そこに愉悦はない。それがオルタだった。
だというのに、戦うことや強さへ意味のようなものを求めている自分が不可解でならない。……ならないのだが。そのことを愉快に思う自分もいる。

己の中で何かが芽吹きはじめている。それはまだ頼りなく小さな存在だが、確実にオルタというサーヴァントの在り方を少しずつ変えていた。



部屋を出てひとまず厨房まで向かうと、いい匂いがしている。誰かーーーーといっても、ここで料理に関して腕の立つサーヴァントなどひとりしかいないのだが、調理中のようだ。
カウンターに区切られた厨房では、思った通りの人物がせっせと何かをこしらえていた。
だが、目線は手元ではなく、隣へ向かっている。

「卵は試し割りをしてからだ」
「あっ」
「殻の混入を防げるし、状態や鮮度を確かめてから使用するようにと……教えたはずだがね?」
「あうぅ……」

カウンターから覗き込めば、椅子の上に立ったAが、割った殻を悲しそうに見つめていた。

君のいる朝 02→←登場人物



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (82 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
164人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。