検索窓
今日:11 hit、昨日:5 hit、合計:54,581 hit

朝と君と待雪の花 02 ページ31

鉢の中には、白い小さな花がいくつか埋められていた。どこから採ってきたと問えば、採ってきたものではないと言う。

「魔力でちょっとな。レイシフト先から採って来るにも時期外れでよ」
「……お前の観賞用か?」
「馬鹿言え、俺じゃなくてマシュのお嬢ちゃんだよ。庭に花がないのがさみしいとさ」

よし、とプロトは計5つの鉢全てに同じ花を植えた。

「暇なら運搬手伝えオルタ。あっ、くれぐれも落とすなよ?! お前そういうの雑いから!」

かくいうプロトも片手にひと鉢ずつ持っている時点で雑だ。指摘する気にもなれず、言われた通り運んだ。
庭は光に溢れていた。このところ天気が良い日が続いているらしい。

「あの聖杯のお嬢ちゃんが来てからなんだよ、晴れ間が多いの」
「……幸先が良いな」
「キャスターは偶然だろ、ってさ」
「面白くねぇだろ、キャスターには」

ひとえにマスターが大切な男だ。今回の件でキャスターの意識にAが排除するものだと刻まれたとしてもオルタは咎めるつもりはない。誰しにも優先順位はある。

花は日差しの中で微笑むように揺れた。花と呼ぶには小さすぎるが、なるほど、女が好みそうな可憐な姿だ。雪の雫のような3枚の花弁で成り立っている。

「……なんだったか、この花」
「さぁな、俺も詳しくねぇがスノードロップとかスノーフレークとかって言うらしいな。マスターの国じゃマツユキソウだとかなんとか」

プロトはちょん、と花をつつく。

「この花、国によっちゃあ死装束の象徴とかで、人に贈ると不吉なんだと」
「……だから直接渡さなかったのか」

存外、細かい所を気にするらしい。プロトはあの盾の娘の芯の強さが好きなのだと、たびたび漏らしていた。余程気に入られたいのだろう。

「ばっか、気にしねぇでどうする! ただでさえ射程圏外だってのに!」
「……男が顔を赤くするな気持ち悪い」
「ああ?!」

威嚇する犬のようにがるがると喉を鳴らしていたが、プロトは思い出したように目を瞬かせた。

「そういやマシュのお嬢ちゃんがこの花を欲しがったの、お前のとこのガキが影響なんだった」
「……Aが? アレが花に詳しいたちか?」
「女って好きだろ、花言葉とか逸話とかそういうの」
「知らん」

第一、女でなく子どもだ。話は済んだと立ち上がった矢先、プロトがニヤニヤと笑いだす。

「はーん、7日と今日までたーんと時間があったのになーんも知らねぇんだな。あのお嬢ちゃんのこと」

朝と君と待雪の花 03→←朝と君と待雪の花 01



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (82 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
164人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。