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君のいる朝 17 ページ21

狂王の呼吸が安定した辺りで、キャスターはマスターを休ませた。ふらふらの彼女はランサーに託し、狂王の治療を引き継ぐ。
致命傷になったのは敵の攻撃ではなく、狂王自身の宝具と狂化で限界まで高められた肉体、そこに穿たれたランサーの投擲だ。

あの時ーーーーランサーはドラゴンを狩れず、セイバーも水が見つけられずで二人は早々に合流していたという。野営地に戻ってみれば、異質なサーヴァントの気配がするので成り行きを見守り、ランサーは投擲に、セイバーは連絡するに至った。
判断としてはどちらも正しい。ランサーの一撃がなければ、10秒の時間も稼げなかった。傷がここまで深かったからこそ、少女ひとりを眼下に置いても狂王はすぐに槍を振るうことができなかったのだ。

心臓を狙うつもりはなかったらしいが、加減は全くされていない。内蔵を見事にぶち破り、骨も筋肉の繊維すらも絶たれ、よくもまぁ立てたものだ。バーサーカーというサーヴァントの特性に、これほどゾッとしたことはない。

大部分の傷はマスターによって塞がれたが、血が止まらない。狂王の肌は白く死人めいて冷たかった。マスターとは違い、キャスターが治療できる範囲は限られる。せいぜい止血と、痛み止めの薬を処方してやるくらいだ。

癒しのルーンを刻みながらも、キャスターはあの瞬間に意識をさらわれる。

(もともと、オルタの野郎はらしくなかった。それに見張りを任せた失策だ)

狂化におかされるマスターを見ていたキャスターの気持ちは、半死半生の狂王にはわかるまい。同じ顔だけに憎悪すらする。ランサーが心臓を貫いていても、キャスターはそれを責めないだろう。あるいはあの場で回路を一時的に絶てなければ、キャスターが狂王を焼き払っていた。そうしなければマスターが死んでいる。

前回といい今回といい、あの娘が来てからマスターとカルデアにろくなことがない。

「……てめぇが連れ込んだのは疫病神か? オルタ」

囁きは己でも信じられないほど苛立ち、低い。
こんなことが続くようならここへ置いておくのは危険だ。

(ダ・ヴィンチ辺りと話すか)

レイシフト先ーーーーどこかの特異点に放置して、マスターから秘密裏に遠ざけることも、考えなければならない。

少女は狂王に、感情らしいものをもたらしている。それは決して悪いことではない。こんな事態にさえならなければ、喜んでやるべきことだ。

(ああクソっ)

Aの泣き顔とマスターの顔が重なってキャスターの思考を乱した。

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Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時

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