アレルヤ 【1】 ページ7
死んだ世界で少女と出会って、二日が過ぎた。
狂王が彼女と過ごしてわかったことは3つ。
1つ。彼女は相当の魔力の持ち主である、ということ。保有量でいえば英霊のそれと変わらない。
彼女が術者であるならば脅威だが、使用用途はただ一つ。自らの肉体を生かすための栄養源に変換し、血液に乗せて全身に巡らせている。
生物が死に絶え、水もないこの世界で彼女が生き残れたのは、ひとえに自らの魔力のおかげだ。
幸い、本人には自分が魔力持ちだという自覚はない。狂王の身体を維持するための食い扶持としてはこれ以上なく優秀な素材だった。
2つ。しかしどうも少女の身体は発育が悪い。魔力でしか補えないからか、それともここに日が差さないからか、立つこともままならないというわけだ。あれから二日間、少女は石像か何かのように座って過ごした。魔力の栄養に体が慣れたか、腹もすかなければ、喉もかわかないという。ニンゲン離れした空気は、こういう生活からにじみ出るのかもしれない。
3つ。少女はーーーーAは、何も知らない。
己の出自、家族、魔術師。色々とキーワードはあげてみるのだが、どれも首を傾げるばかり。
情報源としては頼りないくせしてよく喋る。どこぞの女王の顔がちらつく。女というのは総じておしゃべり好きなのかもしれない。戦場以外ではそう動くことのない表情の男と話して何が楽しいのかと呆れてーーーー思い出す。少女の目は何も見えていないのだった。
あれこれ道草くって脱線しながらもどうにか聞き出せたことは、目覚めた時から視力はなく、傍らには誰もいなかったという体験談。
俄には信じ難いが、目覚めたての頃、Aはまだ動けたという。音を頼りに人の姿を探すうちに現在の状況になったのだと、ちぐはぐの表情で語った。
(困るか笑うかどっちかにしろ、お前)
つくづく面倒な女にばかり行きあたると、狂王は嘆息する。
これらのことから、狂王は推察した。
ここは死後の世界ではなく、カルデアで示された通りの人類史の果てだろう、と。
特異点の修正が叶わなかった世界。人類は文明と共に滅び、地球という星も止まった。
そうなると、ますますこの少女の存在は謎だ。
狂王はのっそりと瞼を持ち上げた。
少女は出会った時と同じように今日も歌う。
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皐摩(プロフ) - もう…！！好き過ぎる…！最高すぎる作品ですうううう！！！！ (2019年2月28日 3時) (
レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 火星さん» 感想とお祝いありがとうございます！このままBADエンドでもいいんじゃないかと途中で悪魔が囁いてきましたが、たぶん狂王の宝具で木っ端微塵にされたんだと思います（笑）続編の方も頑張ります、応援ありがとうございます！ (2017年12月28日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
火星 - 完結おめでとうございます。途中から主人公が消失するのかと思ってヒヤヒヤしていましたが、最後は狂王と主人公がちゃんと幸せそうでよかったです。続編でも頑張ってください、応援しています! (2017年12月27日 10時) (レス) id: 9638a5e671 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 川瀬さん» ありがとうございます！実は川瀬さんの作品、私も陰ながらこっそり読ませていただいています。今は無き理想郷のランスロットと主人公ちゃんのやり取りが微笑ましくて何回も見てます。続編では幼女とイチャイチャ()を考えていますのでよければよろしくお願いします！ (2017年12月13日 23時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 鏡花・オルタさん» ありがとうございます！コンセプトが最後は絶対ハッピーエンド！(漠然)だったので、この結末に落ち着けたことに自分でもホッとしています。続編では優しいオルタと優しい世界を目指します。またよければよろしくお願いします！ (2017年12月13日 22時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Sandoriyon0000 | 作成日時：2017年10月21日 3時
