アメイジング・グレイス【11】 ページ49
｢ああ、君の調査も勿論しっかりやらせてもらう。身を置くことに躊躇いがあるというなら、調査に協力しておくれ｣
不安に思っていたことを言い当てられ、素直に頷いた。今日の診察はこれでおしまいだ。立ち上がるダ・ヴィンチが去り際にそういえば、と振り返る。
｢お世話係の最初の任務だ。あの王はどうも眠りが浅い。しばらく安眠剤と抱き枕になるように｣
ばっちりウィンクまで送られて、ちょっと困惑した。
間もなく夜だ。今日も外は晴れていて、月明かりがここまで届く。あの世界の名残のような部屋に、彼は静かに現れた。
｢A｣
｢くー······｣
手を伸ばすと、それより早く尾が胴体に巻き付く。慣れた手順でわたしを抱き込んだ彼は、ベッドにごろりと転がった。
｢······休め、明日からまた慌ただしい｣
｢くーは？｣
｢俺はいい。どうせ眠れん｣
Aはぶんぶんと頭を振る。それではお世話係失格だ。
｢くーが寝るまで、わたしも寝ない！｣
｢······ﾊｧ｣
狂王は面倒くさそうにため息をつく。しばらく考え込んで、そうだな、と妥協案をだしてくれた。
｢子守のうたでも、うたえ。俺が眠るまで。下手だったら殺す｣
｢ふふ、｣
あまりに傲慢で物騒だったけれど、Aはおかしくて笑ってしまう。だって彼にちっともその気がないのがわかってしまう。
｢あなたはいつも優しいのね｣
｢······ふん、俺は知らん。そんなもの｣
のし、と、狂王は座ったAの膝に頭を置く。武装が解かれ、無防備な肩に手を置いて、Aは歌った。
ーーーーアメイジング・グレイス。美しい、うたよ。
ここは夜の国、ではない。いずれ訪れる朝の、束の間のひととき。そのなかで、ひとりとひとりは、身を寄せ合う。
二人きりの、あの場所はもう戻れない。それでも夜と月の光は、今は穏やかにそこにあった。
やがて眠りに落ちた狂王の頬に、少女はそっと祝福を送る。
｢······だいすき｣
知ったばかりの言葉がどんな意味を持つのかは知らなくても、大切だと思う心は本物だった。ちぐはぐな彼女が得た、たったひとつの、揺るぎない輝きだった。
【第5幕 了】
ーーーー男は、一抹の希望を得た。
｢これでやっと、信じてみようと思えるよ、未来を｣
ーーーーありがとう、僕の、
ーーーーーーーー
カルデア五箇条
�� 希望を抱きこれを忘れるべからず
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皐摩(プロフ) - もう…！！好き過ぎる…！最高すぎる作品ですうううう！！！！ (2019年2月28日 3時) (
レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 火星さん» 感想とお祝いありがとうございます！このままBADエンドでもいいんじゃないかと途中で悪魔が囁いてきましたが、たぶん狂王の宝具で木っ端微塵にされたんだと思います（笑）続編の方も頑張ります、応援ありがとうございます！ (2017年12月28日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
火星 - 完結おめでとうございます。途中から主人公が消失するのかと思ってヒヤヒヤしていましたが、最後は狂王と主人公がちゃんと幸せそうでよかったです。続編でも頑張ってください、応援しています! (2017年12月27日 10時) (レス) id: 9638a5e671 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 川瀬さん» ありがとうございます！実は川瀬さんの作品、私も陰ながらこっそり読ませていただいています。今は無き理想郷のランスロットと主人公ちゃんのやり取りが微笑ましくて何回も見てます。続編では幼女とイチャイチャ()を考えていますのでよければよろしくお願いします！ (2017年12月13日 23時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 鏡花・オルタさん» ありがとうございます！コンセプトが最後は絶対ハッピーエンド！(漠然)だったので、この結末に落ち着けたことに自分でもホッとしています。続編では優しいオルタと優しい世界を目指します。またよければよろしくお願いします！ (2017年12月13日 22時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Sandoriyon0000 | 作成日時：2017年10月21日 3時
