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アメイジング・グレイス【9】 ページ47

体調がどうだの確認することが優先だとはわかっていても、このぬくもりは手放しがたい。

「くう」

囁く声は、またまどろみに揺れている。

「見えなく、なったり、するのかな」
「そうなればなったで、今までと変わらんだろう」
「じゃあ」

Aはじ、っとこらを見上げる。

「もっとよく、みせて?」

おねがいと、まだ力ない声で懇願されては、狂王も無視出来ない。ベッドに寝そべり、Aを再び抱き込む。向かい合った状態になって、かつてなく近い距離に顔を寄せた。

「これでいいか」
「うん」

Aは興味深そうにぺたぺたと触ってくる。出会った時も、そういえばこうされたのだった。好きにさせていたが、すぐに指は力を失ってぱたりと落ちる。

浅い呼吸のまま眠りついた少女のまろい額に、こつりと自分の額を当てて、狂王はそっと願う。

「今は、眠れ」

再び目覚めた時、その瞳にまた光が映るように。たった一夜の奇跡になどにならないように。

月明かりがやがて朝日に変わるまで、狂王は少女の眠りを守り続けた。


Aが目を覚ますと、狂王がこちらを見下ろしていた。膝の上で、眠っていたらしい。ちゃんと彼の顔が見えることに、安心したらほろりと涙が零れた。
すぐに親指で拭われる。頬を包む低い温度が気持ちよくて擦り寄った。そうしたら、子どもでもあやす様にゆらゆらと尻尾をゆすられ、反射的に手を伸ばして掴んでいた。

鋭く突き出た棘でも、おそろしくはなかった。何度も何度も、ここへ掴まってきた。棘が肌を柔く引っ掻くことはあっても、傷つけることはなかったから。

「おい、目覚めたぞ」

狂王が誰かにそう告げる。ひょこりと、今度は女の人が覗き込んできた。

「わ、可愛い! 人形みたい! あ、大丈夫? 見える? オルタから目が悪いって聞いてたんだけど」
「大丈夫、です」
「あっ、怪しいものじゃないからねっ!? 警戒しなくていいよ!」

知らず、尻尾を掴んで身体を固くしていた。くくく、と、狂王がどうしてか得意そうに笑う。

「悪いな、なついているのは俺だけだ」
「······あなたほんとうにオルタ??」
「うるせぇ」

ち、と舌打ちする狂王は、どこか居心地悪そうだ。ぎゅうと肩を抱かれて、Aの身体が軋む。

「オルタストップ! 相手病人!!」
「その病人を連れていくんだろう。行くぞ、早いとこ済ませて休ませたい」
「人の話聞いてよもーー!!」

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設定タグ:FGO , Fate , クー・フーリン(オルタ)   
作品ジャンル:ファンタジー
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皐摩(プロフ) - もう…!!好き過ぎる…!最高すぎる作品ですうううう!!!! (2019年2月28日 3時) (レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 火星さん» 感想とお祝いありがとうございます!このままBADエンドでもいいんじゃないかと途中で悪魔が囁いてきましたが、たぶん狂王の宝具で木っ端微塵にされたんだと思います(笑)続編の方も頑張ります、応援ありがとうございます! (2017年12月28日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
火星 - 完結おめでとうございます。途中から主人公が消失するのかと思ってヒヤヒヤしていましたが、最後は狂王と主人公がちゃんと幸せそうでよかったです。続編でも頑張ってください、応援しています! (2017年12月27日 10時) (レス) id: 9638a5e671 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 川瀬さん» ありがとうございます!実は川瀬さんの作品、私も陰ながらこっそり読ませていただいています。今は無き理想郷のランスロットと主人公ちゃんのやり取りが微笑ましくて何回も見てます。続編では幼女とイチャイチャ()を考えていますのでよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 23時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 鏡花・オルタさん» ありがとうございます!コンセプトが最後は絶対ハッピーエンド!(漠然)だったので、この結末に落ち着けたことに自分でもホッとしています。続編では優しいオルタと優しい世界を目指します。またよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 22時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年10月21日 3時

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