アメイジング・グレイス【7】 ページ45
｢しっかし、聖杯が人の形とは。魔術を根底から覆すよあの子は｣
毎日診察する医療チームの報告書を眺めて眉を寄せるのはダ・ヴィンチだ。前代未聞の存在に資料の作成が大変だとごねている。
｢目が覚めても、どういう風に扱ったものか······正直悩んでるよ。人格や知性がある以上、モノ扱いするわけにもいかんだろう？｣
｢んー、難しく考えなくても、家族みたいな感じでいいんじゃないかな。悪い子じゃないだろうし｣
｢アンタってばほんと······ま、面倒見てくれそうなサーヴァントがいるからねぇ。とんでもなく子守りが似合わなさそうな野郎だけども｣
ガラスで仕切られた白い部屋で、女の子は眠っている。その傍らには、七日間ずーっと、オルタの姿があった。
戦闘のためのレイシフト以外は、椅子に座って、ただじっと女の子を眺めている。行方をくらませていた空白の日々に何があったのか、その様子が語っていた。
｢わたしね、ダ・ヴィンチちゃん｣
真剣な眼差しのオルタを見ていると、やっぱりこう思う。
｢オルタ、今の方がいい顔してない？｣
｢そうかい？ なんにも変わらないように見えるけど｣
｢あれはね、恋だよ恋、ぜーったい恋！｣
｢自分に出会いがないから麻痺ってるのかい？ 顔面偏差値高い優良物件がここにはそこらじゅうで転がってるんだ、あんたが告れば諸手を上げるヤツもいるだろうに｣
｢仲間をそんなふうに見たりしませんー！｣
ひとしきり叫んで、ガラスをなぞる。
｢······はやく、目が覚めるといいね、オルタ｣
あの子が目が覚めたそのとき、オルタはきっとーーーー笑える。そんな気がした。
医務室も、電力消費の為に一定の時間になると電気が落とされる。治療設備の電力のみ稼働させたまま、その日も暗闇に包まれた。
狂王にとって、暗闇はおそれるものでもなんでもない。目が慣れてしまえば見通せる。しかしーーーー眼下で眠る少女のことは、なにひとつわからない。
殺した、と思った。手応えもあった。苦しませないようせめてと真っ直ぐに穿ったはずの心臓は、今も鼓動しているらしい。
薄闇の中で、Aの寝顔はいつかと違って静かだった。ゆっくりゆっくり、この世界から遠のいていっているような気さえする。
時折、力任せに掴んで揺すってしまいたい衝動にかられる。
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皐摩(プロフ) - もう…！！好き過ぎる…！最高すぎる作品ですうううう！！！！ (2019年2月28日 3時) (
レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 火星さん» 感想とお祝いありがとうございます！このままBADエンドでもいいんじゃないかと途中で悪魔が囁いてきましたが、たぶん狂王の宝具で木っ端微塵にされたんだと思います（笑）続編の方も頑張ります、応援ありがとうございます！ (2017年12月28日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
火星 - 完結おめでとうございます。途中から主人公が消失するのかと思ってヒヤヒヤしていましたが、最後は狂王と主人公がちゃんと幸せそうでよかったです。続編でも頑張ってください、応援しています! (2017年12月27日 10時) (レス) id: 9638a5e671 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 川瀬さん» ありがとうございます！実は川瀬さんの作品、私も陰ながらこっそり読ませていただいています。今は無き理想郷のランスロットと主人公ちゃんのやり取りが微笑ましくて何回も見てます。続編では幼女とイチャイチャ()を考えていますのでよければよろしくお願いします！ (2017年12月13日 23時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 鏡花・オルタさん» ありがとうございます！コンセプトが最後は絶対ハッピーエンド！(漠然)だったので、この結末に落ち着けたことに自分でもホッとしています。続編では優しいオルタと優しい世界を目指します。またよければよろしくお願いします！ (2017年12月13日 22時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Sandoriyon0000 | 作成日時：2017年10月21日 3時
