アメイジング・グレイス【6】 ページ44
「オルタ!!」
もう長い間、見ていないような気がするその背に駆け寄る。
「オルタ!! オルタ!!」
抱きつくとようやく、オルタはのろのろと動いた。
「マスター、か」
「探したんだから!! あとすっごく心配した!」
「すまん」
いつになく素直なオルタに違和感を覚えてのぞき込むと、腕の中に眠る女の子がいた。いや、眠っているように見えるだけで、胸元には深々と槍が突き刺さっている。
「一緒に、死んでやるつもりだったんだがな」
オルタは呟く。棘だらけの尾が優しい動きで女の子の身体を包んだ。
「こいつ、死なねぇ」
「え? 生きてる?!」
「ああ。心音がある」
マスターはそれを聞いてオルタの手を取った。こうしてはいられない。
「帰ろうオルタ! その子を助けよう!」
〈やぁっと繋がった!! オルタは?! いるね! 聖杯らしい反応もあり!! よし、帰るよ!!〉
早口で捲し立てるのはダ・ヴィンチだ。これまで全く繋がらなかった通信が、ここへ来てようやく繋がった。
「お願い! ダ・ヴィンチちゃん!」
(歴史の修正を認めます、レイシフト、開始ーーーー)
「死にぞこなった、な。お互い······ならば仕方ない。諦めろ、A」
狂王の声が、光の中へ消えていく。
「お前は俺がもらう」
【空想都市、冬木ーーーー
まるで最初から何も無かったように、その世界は正された。
ーーーーーーーー
「オルタ」
マスターは今日も、朝一番に声をかけた。
先に反応したのは凶悪な見た目の尾っぽだ。ゆらりとしなるが、返事はなかった。
オルタを連れ帰って七日目、それは同時に、女の子の眠りの期間だ。
オルタの槍ーーーーゲイ・ボルグに貫かれた女の子の心臓は、本当なら治りようなどなかったはずなのだ。それが不思議なことに、カルデアに連れ帰った途端、みるみると傷は塞がった。それはオルタもそうだったし、魔力を消費したキャスターも全快だった。
最後に浴びたサーヴァントの光が、そういう効果の宝具だろうというのが、ダ・ヴィンチとロマニの見解だ。
あの都市で出会った女の人ーーーー結局、彼女が誰でなんだったのか。エミヤは何か知っている様子だったけれど、落ち込んでいる背中を見ていたら、無理に聞き出すことはできなかった。
いずれ落ちついたら、エミヤのことだ、聞かせてくれるだろう。
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皐摩(プロフ) - もう…!!好き過ぎる…!最高すぎる作品ですうううう!!!! (2019年2月28日 3時) (レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 火星さん» 感想とお祝いありがとうございます!このままBADエンドでもいいんじゃないかと途中で悪魔が囁いてきましたが、たぶん狂王の宝具で木っ端微塵にされたんだと思います(笑)続編の方も頑張ります、応援ありがとうございます! (2017年12月28日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
火星 - 完結おめでとうございます。途中から主人公が消失するのかと思ってヒヤヒヤしていましたが、最後は狂王と主人公がちゃんと幸せそうでよかったです。続編でも頑張ってください、応援しています! (2017年12月27日 10時) (レス) id: 9638a5e671 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 川瀬さん» ありがとうございます!実は川瀬さんの作品、私も陰ながらこっそり読ませていただいています。今は無き理想郷のランスロットと主人公ちゃんのやり取りが微笑ましくて何回も見てます。続編では幼女とイチャイチャ()を考えていますのでよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 23時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 鏡花・オルタさん» ありがとうございます!コンセプトが最後は絶対ハッピーエンド!(漠然)だったので、この結末に落ち着けたことに自分でもホッとしています。続編では優しいオルタと優しい世界を目指します。またよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 22時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年10月21日 3時