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【7】 ページ32

わたしは肉体にこれまでの全てを伝えた。どうして互いが生まれたか、自分の口から語ることは辛い。けれどこの先はもっと辛いかもしれない。

「あなたの祈りは、彼の為にあってはいけない」
「わたしはあなたの未来、あなたはわたしの過去」
「あなたもきっと」

酷いことを言っていると思った。
これはわたしが招いた結果。本当は、この子は静かに、眠りについていたはず。
成長した······そう、(精神)と、死んだわたし(肉体)。何が私たちを分けたか。

役に立てることに、喜びを見出してしまったあの時だ。不相応にも関わらず。
自分の感情によって迎えた結末を、この子に押し付けることになんの意味があるのだろう。

ーーーーああ、認めよう。結局、私は羨ましいのだ。ひとりでなくなったこの子が。
浅ましくて醜い、感情。
ーーーーならばこそ、受け入れ、赦さなければなるまい。

「······いいえ、いいの。忘れて」

私はわたしを突き飛ばす。

「忘れて······」

呟きは夢のように頼りなく、暗闇に吸い込まれていった。

赦す、許す。繰り返す言葉がいつか真実になる日まで、あなたは私を忘れなさい。私もあなたを忘れるから。そうしてやっと、本当の意味で、結末を迎え入れることができるから。

程なくして、少女がここへ現れた。
細い体に背負ったあまりに深い因果と比例して結ばれた絆の多さに、これはすごいと瞬く。
世界を救う少女。奇跡の体現者。彼女もまた抑止力の導きによってマスターとなったのだろう。本人にその自覚はないだろうけれど。
絆を少し探れば、かつての守護者の存在を感じた。サーヴァントとして世界を救う。きっとやりがいのある仕事だろう。良かったと、目を伏せる。彼のその後は気がかりだった。
しかしどうも私は概念という性質上色々と見えすぎてしまうので、自分でセーブしないといけない。私が踏み込める場所などないのだから。

見上げれば青い護りの光が降り注ぎ、よほど強い魔力の持ち主が彼女をここまで導いたらしかった。
こんなに深い、闇の(はて)まで、彼女は自分のサーヴァントを探しに来たのだ。還してあげるのが筋だろう。

けれどもう少しだけ、わたしには彼が必要だ。

「ねぇ、どこか痛いの?」

少女は私を見るやそうたずねてきた。
そう見えるなら、よほどひどい顔をしてるに違いない。私は慌てて微笑む。

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設定タグ:FGO , Fate , クー・フーリン(オルタ)   
作品ジャンル:ファンタジー
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皐摩(プロフ) - もう…!!好き過ぎる…!最高すぎる作品ですうううう!!!! (2019年2月28日 3時) (レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 火星さん» 感想とお祝いありがとうございます!このままBADエンドでもいいんじゃないかと途中で悪魔が囁いてきましたが、たぶん狂王の宝具で木っ端微塵にされたんだと思います(笑)続編の方も頑張ります、応援ありがとうございます! (2017年12月28日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
火星 - 完結おめでとうございます。途中から主人公が消失するのかと思ってヒヤヒヤしていましたが、最後は狂王と主人公がちゃんと幸せそうでよかったです。続編でも頑張ってください、応援しています! (2017年12月27日 10時) (レス) id: 9638a5e671 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 川瀬さん» ありがとうございます!実は川瀬さんの作品、私も陰ながらこっそり読ませていただいています。今は無き理想郷のランスロットと主人公ちゃんのやり取りが微笑ましくて何回も見てます。続編では幼女とイチャイチャ()を考えていますのでよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 23時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 鏡花・オルタさん» ありがとうございます!コンセプトが最後は絶対ハッピーエンド!(漠然)だったので、この結末に落ち着けたことに自分でもホッとしています。続編では優しいオルタと優しい世界を目指します。またよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 22時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年10月21日 3時

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