楽園を騙る 【2】 ページ4
この少女をどう取り扱ったものかと、改めて見下ろす。
年の頃は判然としない。顔は幼女のそれだが、言葉選びは利発そうだ。おっとりとしているが、それは性格によるものか。
人造人間(ホムンクルス)を前にしたような感覚が最も近いかもしれない。普通じゃないと、本能が訴える。けれど人形にしては、生を感じる身体。
わからない。これはなんだ。
「お前、名はわかるか」
興味を持たれている、とでも思ったのか。
少女は見るからに瞳を輝かせた。
「ないわ!」
······狂王は間を置いて、目を眇めた。
無力で無害そうなくせに、人の気力を吸い上げていく。あまつさえ。
「ねぇ、あなたがつけて下さらない?」
「はァ?」
「わたしの名前! せっかくおともだちになったんだもの。あなたにつけて欲しいわ」
「トモダチ、な」
「ええ!」
こうのたまう始末だ。面倒くさい。やはり殺すか。
ちらりと見下ろせば、見当違いの方を見つめながらありありと期待を唇に浮かべている。
「じゃあ、A」
野良犬にでもつけるようにぞんざいに、仕方なく名前をくれてやった。
それでも少女は、この世全ての幸福を得たかのように、甘く微笑む。
「A!なんてすてきな名前!」
ああ、頭痛がする。
「少し黙れ」
「あらどうして? わたし嬉しくって今ならワルツでも踊れそうなのに!」
「その棒切れの足でか」
「む、その言い草はひどいわ。でも、仕方ないの。わたしもう立てないの」
先程までの笑顔が嘘のように、肩を落とす。くるくると表情も反応も変わる様子は忙しない。まるきり子どもだ。
「そんな状態でよく生きれたな」
「きっと神様が許して下さったんだわ、生きても構わないって」
「クハッ······!」
耐えきれずに噴き出した。ああ、この少女、予想以上に【壊れて】いる。こんな世界に神もへったくれもない。肩を震わせる狂王に気づいたらしい。やはり見当違いに、少女もころころと笑いだす。
「私ずっとお願いをしていたの。ここを楽園にしてください、って! ずっと、おともだちが欲しかったの」
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皐摩(プロフ) - もう…!!好き過ぎる…!最高すぎる作品ですうううう!!!! (2019年2月28日 3時) (レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 火星さん» 感想とお祝いありがとうございます!このままBADエンドでもいいんじゃないかと途中で悪魔が囁いてきましたが、たぶん狂王の宝具で木っ端微塵にされたんだと思います(笑)続編の方も頑張ります、応援ありがとうございます! (2017年12月28日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
火星 - 完結おめでとうございます。途中から主人公が消失するのかと思ってヒヤヒヤしていましたが、最後は狂王と主人公がちゃんと幸せそうでよかったです。続編でも頑張ってください、応援しています! (2017年12月27日 10時) (レス) id: 9638a5e671 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 川瀬さん» ありがとうございます!実は川瀬さんの作品、私も陰ながらこっそり読ませていただいています。今は無き理想郷のランスロットと主人公ちゃんのやり取りが微笑ましくて何回も見てます。続編では幼女とイチャイチャ()を考えていますのでよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 23時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 鏡花・オルタさん» ありがとうございます!コンセプトが最後は絶対ハッピーエンド!(漠然)だったので、この結末に落ち着けたことに自分でもホッとしています。続編では優しいオルタと優しい世界を目指します。またよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 22時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年10月21日 3時