もろびとこぞりて【1】 ページ20
｢アンヨアンヨ、アンヨがジョウズ｣
｢むううう！！ 子供じゃないのに！！｣
辛うじて形を保つ長椅子にしがみつきながら立つAを、5歩ほど先の距離でどっかりと座り込んで眺める狂王こと、クー・フーリン【オルタ】とのやり取りは、かれこれ小1時間ほど続いていた。
狂王が死んだ世界へやってきて今日で7日目になる。
危惧していた消滅はなかった。Aに触れているだけで勝手に魔力供給がされるらしい。体液の交わりもなく供給できるとは聞いたことがないが、事実としてオルタはここにいる。
そうなれば今度はAの生命活動が危ぶまれそうなものだが、とんでもない保有量を誇る彼女の肉体は、これまで以上に減る魔力を慌てて生成しては元の量へと調整して、己を生かそうと活発になっている。
脆いようで強く生きている。つくづく｢ちぐはぐ｣な少女のそういう部分を、狂王は少しずつ気に入りはじめていた。
約束通り Aは歩く練習をはじめた。
だが、歩く前にはまず立てなければならない。
狂王は仮説をたてていた。Aの足が不自由なのは、魔力が全身に回っていないせいだろう、と。
誰もいない、敵も味方もない。この世界では何かを見る、身を守る、そんな場面もないわけだ。
だから少女の身体は不必要な能力を退化させ、ただ生命活動のために魔力を使う決断に至った。
ならば、動かせばいい。そうすれば、眠ったものはまた目覚める。
この仮説が正しいのならば、目も、あるいは。
狂王は尻尾を貸してやり、痩せた足を支えてやった。手伝ってやると口にした以上は、そのくらいの面倒はみてやるつもりでいた。Aは本当にーーーー心の底から嬉しそうに手を伸ばす。
小さく、弱い生き物。戦士としては嫌悪し忌避すべきもの。だが以前ほど憎めない。
ーーーーなぜ？
疑問が淡く浮かんだそのとき、しゃくりあげる声がして狂王は思考の海から浮かんで瞬きをした。
目の前には、ぶるぶると痙攣じみた筋肉の震えを押さえ込んで尻尾に抱きつくA。まだ3分も経っていないが、よほど辛いらしい。
痛みに引き結ばれた唇が｢嫌だ｣だの｢辛い｣だの弱音を吐くことはなかった。ごめんなさいと、申し訳なさそうに謝るのだ。必ず立てるようになるから、見捨てないでくれ、と。
······さすがの狂王も参ってしまい、休憩を言い渡した。
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皐摩(プロフ) - もう…！！好き過ぎる…！最高すぎる作品ですうううう！！！！ (2019年2月28日 3時) (
レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 火星さん» 感想とお祝いありがとうございます！このままBADエンドでもいいんじゃないかと途中で悪魔が囁いてきましたが、たぶん狂王の宝具で木っ端微塵にされたんだと思います（笑）続編の方も頑張ります、応援ありがとうございます！ (2017年12月28日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
火星 - 完結おめでとうございます。途中から主人公が消失するのかと思ってヒヤヒヤしていましたが、最後は狂王と主人公がちゃんと幸せそうでよかったです。続編でも頑張ってください、応援しています! (2017年12月27日 10時) (レス) id: 9638a5e671 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 川瀬さん» ありがとうございます！実は川瀬さんの作品、私も陰ながらこっそり読ませていただいています。今は無き理想郷のランスロットと主人公ちゃんのやり取りが微笑ましくて何回も見てます。続編では幼女とイチャイチャ()を考えていますのでよければよろしくお願いします！ (2017年12月13日 23時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 鏡花・オルタさん» ありがとうございます！コンセプトが最後は絶対ハッピーエンド！(漠然)だったので、この結末に落ち着けたことに自分でもホッとしています。続編では優しいオルタと優しい世界を目指します。またよければよろしくお願いします！ (2017年12月13日 22時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Sandoriyon0000 | 作成日時：2017年10月21日 3時
