夜の国

きよしこの夜 【3】 ページ14

がばりと深く、頭を下げる。知っていたらどうか教えて欲しいと、切実さを込めて。
キャスターの足元しか見えないほど、深く。

｢顔を上げな｣

恐る恐る、顔を上げた。宝石より赤いキャスターの瞳。飲み込まれそうな鮮やかさと深さに、少女はそれでも眼差しを外さない。
緊張が、その場を支配した。
マシュも、固唾をのんで成り行きを見守る。

に、とキャスターの口角が上がった。

｢全く、お前のここぞって時の瞳はいつ見てもいいな。滾るわ｣
｢し、しょ、う！！ こっちは！！ 真剣に！！｣
｢わーってるさ。着いてこい。あぁ、お嬢ちゃんも一緒にな｣

くいと顎をしゃくるキャスターの背を慌てて追いかける。長い足に置いていかれないように小走りになる。
行く先が全く想像つかない。

｢何か方法があるんですか？｣

マシュの問いに、キャスターは頷いた。

｢将が揺らげば配下も揺らぐ。腑抜けたままでいるなら教えるつもりはなかったが······よく持ち直したな｣
｢マシュの顔を見て、我に返ったというか｣
｢ま、本当なら自分で対処すべきことなんだが｣
｢う｣

珍しく褒められたと思ったらこれだ。むーっと唇を噛むのを、マシュが苦笑気味に宥めた。

｢先輩、唇きれちゃいますよ。石原さ〇み級のトゥルントゥルン目指すんじゃなかったんですか｣
｢はっ、そうだった！ 乙女完成計画が！！｣
｢やめとけやめとけ、せいぜい小娘がいいところだろうが｣

一笑するキャスターの背を、少女はそれはもう思い切り殴った。バカーー！！という高らかな声は、沈んでいたカルデアに元気よく響く。
マスターが元に戻ったと安堵するサーヴァントたちの気持ちを受けてかどうかは定かではないがーーーー少女はぽかぽかとキャスターに追撃を加え続けた。


ーーーーーーーー

【工房】

そこには魔術師たちの神秘が詰まっている。誰にも開かず、秘匿されてしかるべき、魔術の生誕場。

｢ま、入れよ｣

キャスターはそれを堂々と、マスターたる少女に開けてみせた。


ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
番外 【1】
フォウ｢イシハラ、サ〇ミっ、フォウ！｣
｢はっ！ 今日もお肌パックしなきゃ！ マシュもする？｣
｢はい、先輩！｣
｢今日も乙女、目指すぞー！｣
｢おーっ！｣｢フォッ！｣

イシハラサ〇ミは永遠の憧れ、な、マスター。多分部屋にポスター貼ってる。

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