アレルヤ 【5】 ページ11
「ありがとう、外に出してくれて。あそこからはもう2度と出られないと思ってたから」
「何を言ってる」
「え?」
感謝を遮り、狂王は子猫をつまむように少女の首根っこを掴んだ。肩のあたりに投げれば、子供らしい悲鳴をあげてしがみつく。
「もう! 乱暴!」
きゃんきゃんとほえ立てる小煩さで、少し溜飲が下がる。力ではAは決して狂王には叶わない。
「ガキだな」
「子どもじゃないわ!」
「ひとりでろくに立てもしないのにか」
「う」
迷惑をかけている自覚はあるらしい。途端にしおらしくなる。
狂王は瓦礫を踏み分けて歩く。
ここへ来た日はひとり。いまは2人。ぶらぶらと力なく揺れる細すぎる足を、傷つけないように抱えた。
「また連れてきてやってもいいぞ。あそこでお前といるのもそろそろ退屈でな」
はっとAが息を呑む。
「本当?」
「ただし」
「ただし?」
言葉の先を待つA。どきどきと高鳴る鼓動が狂王にも届く。わざとらしくもったいぶってーーーー狂王は命じた。
「歩けるようになれ」
「無理よ、そんな」
「目の方はどうにもならんが、足はどうとでもなる。······俺は人の加減など知らん。あの陰気な教会から出る時はお前を抱えて跳ぶ」
浮遊と落下の恐怖を思い出したのか、面白いほど固まる。狂王はクツクツと、喉を鳴らした。Aは涙目のまま叫んだ。
「意地悪っ!」
「嫌なら歩け。それだけの話だろう」
「じゃあ、手伝ってくれるのね!?」
「フン、手のかかるお嬢さんだな」
きっと、ろくに立てはしない。眺めているだけでも、少しは退屈しのぎになるだろう。
「本当に手伝ってくれるの?」
「くどい」
低い声では冷たい印象の方が強いであろうに、Aは嬉しそうに笑う。
「あなたは優しい人ね」
「······くだらん」
雪のように、白く降り積もる灰。
少女の笑い声と、狂王の足音だけが、柔らかく反響する。
月の光が、いっそう明るい夜のこと。
【第2幕 了】
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(タイトル別)オルタに「お嬢さん」と言わせたかった話
きよしこの夜 【1】(Side カルデア)→←アレルヤ 【4】
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皐摩(プロフ) - もう…!!好き過ぎる…!最高すぎる作品ですうううう!!!! (2019年2月28日 3時) (レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 火星さん» 感想とお祝いありがとうございます!このままBADエンドでもいいんじゃないかと途中で悪魔が囁いてきましたが、たぶん狂王の宝具で木っ端微塵にされたんだと思います(笑)続編の方も頑張ります、応援ありがとうございます! (2017年12月28日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
火星 - 完結おめでとうございます。途中から主人公が消失するのかと思ってヒヤヒヤしていましたが、最後は狂王と主人公がちゃんと幸せそうでよかったです。続編でも頑張ってください、応援しています! (2017年12月27日 10時) (レス) id: 9638a5e671 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 川瀬さん» ありがとうございます!実は川瀬さんの作品、私も陰ながらこっそり読ませていただいています。今は無き理想郷のランスロットと主人公ちゃんのやり取りが微笑ましくて何回も見てます。続編では幼女とイチャイチャ()を考えていますのでよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 23時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 鏡花・オルタさん» ありがとうございます!コンセプトが最後は絶対ハッピーエンド!(漠然)だったので、この結末に落ち着けたことに自分でもホッとしています。続編では優しいオルタと優しい世界を目指します。またよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 22時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年10月21日 3時