【#コンパス】この心は【アダム＝ユーリエフ】 (ページ16)

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颯爽と、すぐさま動き出そうとしたアダムの前に立って進行妨害をしてみせて、アグライアは笑う。

「………ご存知の通り、私は彼の護衛を仰せつかっている身です」
「たしかに、存じ上げておりますわ。しかし、今は彼の護衛をする必要はありません。言ったでしょう？内緒話中だと。誰かに聞かれたくない話なんて一つや二つ普通にあります」

冷戦が勃発した。二人の間に閃光が走ったように見えて、子供たちは思わず距離をとったのは言うまでもない。

失敬だが、少しだけ睨みつける。が、アグライアの顔には笑顔が面のように張り付いたままだ。どうしても退く気はないらしい。

アダムとしては、ユランブルクへ彼と行く前に、ある程度彼の情報が欲しかった。動き回るのが好きだとか、じっとしていないだとかそう言う情報だ。何も知らなければ、姿を見失い易くなったり言うのが遅くて彼自身に怪我を負わせてしまうかもしれない。護衛をする身としては、由々しき事態だ。

………いや、アグライアの話も分からない訳では無い。実際、自分にも人に公言したくないことはあるし、隠してることを何の了承もなく聞かれるのはあまり良い気分ではない。わかっていて、はいそうですか、わかりましたと言えない。
その理由は、アグライアの笑顔はなんというか、挑発的で、ここで退くことを馬鹿にされるのではと思ってしまっていた。
………後にしてみれば、ただの子供の意固地だ。

「そこを退いて頂きたい」
「謹んでお断り申し上げます。それとも、力ずくで退かしますか？」
「そんな野蛮なことはしません」
「そうですか、良かった」

アグライアが笑みを深くした。何故だか、嫌な予感がする。
彼女はくるりと子供たちへ向き直ると、

「ごめんね、話の腰を折っちゃって。みんな、アダムに聞きたいことまだまだあるよね？続きしていいよ！」
「！？」
「アダムさん、いっぺんに答えられないだろうから、“時間をかけてゆっくり一つずつ”質問しましょうね」

彼女はアダムが子供をあしらうのが下手な事に気づいていた。だからこそ、Aの元に行かせないために子供たちを呼んだのだ。しかもいつの間にか、子供の人数が増えている！
子供たちはわらわらと寄ってきて、その輝く瞳をこちらに向けている。逃げられそうにない。

「ごめんなさいね？」

さっきは天使のように見えた笑顔が、悪魔のようにしか見えなくなったのは当然と言える。