恋愛セールスマン、小瀧

08. ページ8

〆．



「んまー！」



美味しそうにシチューを頬張り、「おかわり！」と元気な声で伝えてくれる。



「どれくらいおかわりします？」



「同じくらい！」



「はーい」



シチューをつぐ間にサラダをもっしゃもっしゃ。



可愛いなぁ……。



……………可愛い、って思っちゃった。



「小瀧さん自身は恋人いらっしゃるんですか」



「っぐ、げほっ、げほっ！、」



「あーあーあーあー、すみません」



背中をさすさす。



水を渡せば勢いよく飲み干した。



「い、いません、おらんからこの仕事してます」



「どうして？イコールで繋がらないのですが……」



「まあ、いろいろ」



濁してる。



じゃあもう聞くのやめとこうか。



「小瀧さんは、そもそも私が恋人を作らない理由、わかりますか？」



「わか……りません」



「作れないんですよ」



恋愛セールスマンとか胡散臭いこと言ってる人にしか話せないよ、こんなこと。



「自分から恋愛と距離をとってきたんです。興味ないって。でも本当は、けっこう憧れたりするんです」



小瀧さんは真剣な顔で話を聞いている。



「…………今も、嬉しかったです。自分の作ったご飯、美味しそうに食べていただいて。ありがとうございます」



「あ、いやこちらこそ！美味いご飯ありがとうございます！」



頭を下げられるので、私も同じように下げ返す。



「小瀧さんが恋人いないのは、意外です。私だったら好きになってると思いますけど」



「えっ！？」



目を見開き、ぐっと顔を寄せてくる。



「ほんまに！？」



「はい。出会い方が違えば」



「…………………うう」



なんで落ち込んでるんだろ。



〆．

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