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懇願 ページ6

『ただいまー』

「ワンッ!」

『あ!ちょっと暴れないで、ハロ』




朝のうちにレイの容態を見に行って、風見さんに挨拶をしたらすぐに帰った。誰もいない部屋だが、いつも通り声をかけるとハロが出迎えてくれる。

ほんの少しだけ病院に行っただけなのに、消毒の匂いが苦手なハロは逃げて回る。
落ち着かせるために洗濯済みの服に着替えた。この子に怪我でもあったら、それこそレイに怒られるだろう。



事件の日はもっと大変だった。
まず、ハロは血と硝煙の香りに騒いだ。
そして血を落とした後、自分で処置をしようと消毒を出した時にも鳴きわめいた。

落ち着いてくれ、と懇願しながら香水のかかったタオルを囮にササッと処置を済ませたのだ。
私が器用だったことを褒めて欲しい。




そんなことを思い出し、溜息をつきながら私はハロを抱き抱えた。
洗濯された服は柔軟剤の香りだから、この子の主人であるレイの匂いだろう。





『ごめんごめん…よーし、いい子』

「ワンッ!」




レイは2日も寝ている。
命に別状はない、と聞いているから今はもう目覚めるのを待つのみである。

昔からタフな人だった。
あの細い身体はフェイクなのではないか?ってくらい実は引き締まっていて、喧嘩だって馬鹿みたいに強い。

今思えば組織の時も、情報収集がメインの役割のはずなのに、その腕っ節を買われてよく潜入系やトラップ系などの近接任務をやらされていたな…。

かなりの怪我だったから無理もないけど、あのゴリラがこんなにも死にかけている……と考えると感慨深いものだ。



人の命が儚いものなのは理解しているつもりだった。
スコッチの時もライの偽装死の時も、……自分が誰かの命を奪う時も、私はいつだって真っ直ぐ命について考えてきたはずだった。

でも初めてだった。
亡くしたくない人がこんなに近くで、……私の目の前でそれを手放さんとしているのは。

そして必死に彼を抱きとめ、処置し、死なないでと言ったのは。


改めて理解させられたのだ。
命は吹き飛ぶくらい軽いもので、いつ失ってもおかしくないものだってことを。



正直、怖かった。
レイがいなくなるのが嫌だった。




腕の中のハロが寝息を立てる。
そっとハロを下ろして凝りそうな腕を伸ばした時、ピンポンと軽快にチャイムが鳴る。





『はーい、……え、風見さん?』

「すみません、病院に来てくださいませんか?」

『……は?』





どうやら、眠り姫が私をお呼びのようなのだ。

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cherry*(プロフ) - Lalaさん» コメントありがとうございます🥲そう言っていただけて本当に嬉しいです❤️‍🔥亀更新ですが是非最後までお楽しみください、!! (5月30日 17時) (レス) id: 04cb4253df (このIDを非表示/違反報告)
Lala(プロフ) - 最高です!こんなに最高なストーリーは初めてです!大変でしょうが更新を待ってます。かなり楽しみです🥰 (5月30日 12時) (レス) @page38 id: a10f094dfd (このIDを非表示/違反報告)
cherry*(プロフ) - ナミさん» わーー!こちらにも!!ありがとうございます🥲すごく嬉しい🥲 (2023年4月9日 19時) (レス) id: 04cb4253df (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまいました!作品の題名がすごくいいですね!!応援しています(^^)これからも頑張ってください!!! (2023年4月9日 13時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:cherry* | 作成日時:2023年2月4日 17時

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