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『…了解』
「《いい子だ。報告を待つ》」
『キール達と合流したいんだけど、取り持ってくれないの?』
「《…図々しい。自分でどうにかしろ》」
『キール達が私の招集で………』
言葉と動きを止めた。
視界の端で同じくお酒を物色する影が見えたからだ。
誰だ。
いや、いつから居た。
全く気付かなかった。
…違う。…気配がしなかった、。
「《どうした》」
『人が増えてきた。
無理やりに通話を終わらせる。
要件は終わった。
これ以上ジンと会話を続けるメリットは無い。
耳の通信機を外し、数メートル先でワインを眺める男を目に入れた。
明るい茶髪。
痩身…いや、着痩せか。袖から覗く手首はがっしりしている。
背は高い。
メガネ…そして細い目。
一見そんなに歳は行っていないように見える。
ただ、歩き方や姿勢が武道を嗜む雰囲気を醸し出す。
つい横目で観察していると、不意に彼はこちらを向いた。
やばい、目が合った。
咄嗟に目をそらす。
…あぁ、馬鹿。そんなことしたら余計変じゃないか。
いつもだったらもっと冷静な誤魔化し方を実行していたところだろう。
だめだ、今日は本当に頭が回らない。
せめてもの誤魔化しとして、目の前の瓶を手に取りラベルを眺める。
綺麗な赤ワインだ。きっと美味しいのだろう。
「あの」
『…はい』
肩が跳ねる。
いつの間にか少し先にいた例の彼がそばまで来ていた。
本当に今日の私が無能なのか、相手の気配の消し方が上手すぎるのか。
ここまで来ると恐怖が全てに勝ってしまう。
「あ、すみません驚かせてしまって」
『…いえ』
「これ、」
そう言って彼はひとつの瓶を私に差し出す。
反射的に手に取りラベルを見ると、どうやら白ワインだ。
『…これは?』
「盗み聞きするつもりはなかったのですが、”キール”と聞こえてしまったもので」
『…』
「…カクテルでしょう?」
どこから…どこまで聞かれていた。
まずい。さすがに注意が足りなかったか。
ヒヤッと背筋が疼く。
「見た目は赤いですが、白ワインです。だから、それじゃなくてこちらかと」
そこでようやく、私が赤ワインを元々手にしていたことを思い出した。
『…助かります』
渡してもらった赤ワインをカゴに放り、私は逃げるようにその場を後にした。
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cherry*(プロフ) - Lalaさん» コメントありがとうございます🥲そう言っていただけて本当に嬉しいです❤️🔥亀更新ですが是非最後までお楽しみください、!! (5月30日 17時) (レス) id: 04cb4253df (このIDを非表示/違反報告)
Lala(プロフ) - 最高です!こんなに最高なストーリーは初めてです!大変でしょうが更新を待ってます。かなり楽しみです🥰 (5月30日 12時) (レス) @page38 id: a10f094dfd (このIDを非表示/違反報告)
cherry*(プロフ) - ナミさん» わーー!こちらにも!!ありがとうございます🥲すごく嬉しい🥲 (2023年4月9日 19時) (レス) id: 04cb4253df (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまいました!作品の題名がすごくいいですね!!応援しています(^^)これからも頑張ってください!!! (2023年4月9日 13時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cherry* | 作成日時:2023年2月4日 17時