ビーフシチュー ページ37
重い。
暑苦しくて目が覚めた。
寝起きだから視界がぼやっとしている。
スッキリしない頭を叩き起すように、私は大きく息を吸った。
『……ん、』
にしても、重い。
部屋は暗い。まだもう少し寝ていたいと言う気持ちを抑えながら換えを少し起こす。
すると腰に巻かれた腕が目に入った。
…レイだ。
『…』
振り返って背中側にいる彼の姿を確認すると、あどけない顔で眠るのが確認できた。
…いつ帰ってきたんだろう。
全く気が付かなかった。
夜遅くに帰ってきたから相当疲れているんだろう。
私が動いても全然起きない様子だ。
いつもと対して変わらない距離。
だけど今日は妙にドキドキしてしまって、私はいたたまれなくなる。
そっと彼の手をどかして起き上がり、部屋を出た。
固まっている身体を伸ばして深く息を吸うと、脳がスッキリし始める。
、
キッチンには綺麗に洗われた皿が乾かされていた。
鍋に残しておいた手作りのビーフシチューは空になっている。
相当焦がした。何せほぼ初めての料理だったから。
お世辞にも美味しいとは言えない料理だった。大失敗だ。
本当はもう全部自分で食べて、料理なんてしてなかったことにしようと思ったりもした。
でもレイに食べて欲しくて彼の分まで想定して作ったから、量が多くて残しておく他なかったのだ。
『……律儀』
置いておいたメモに手書きで「わるくなかった」と書かれている。
レイの書く文字を見たことはあまりないが、レイらしい綺麗な字をしていた。
あんなに微妙な味のものを全部食べたんだ、。
嬉しいような、悔しいような。
どうにもならない気持ちで、私は胸がいっぱいになる。
…ああ、どうしよう。
心を落ち着けたかった。
”そう”思うことは邪だと、どこか引いていたかったから。
絶対”そう”じゃないと私はずっと思ってきたから。
…どうしよう。
夜風に当たりたくなって、私は靴を履いた。
そのまま、合鍵を片手に部屋をそっと出る。
冷たい風が薄着を撫でる。
寒いだけじゃなくて、頭でも冷やすことが出来ればいいのに。
…どうしよう。
…どうしよう、どんどん好きになる。
気がついてしまったらそれは一瞬だった。
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cherry*(プロフ) - Lalaさん» コメントありがとうございます🥲そう言っていただけて本当に嬉しいです❤️🔥亀更新ですが是非最後までお楽しみください、!! (5月30日 17時) (レス) id: 04cb4253df (このIDを非表示/違反報告)
Lala(プロフ) - 最高です!こんなに最高なストーリーは初めてです!大変でしょうが更新を待ってます。かなり楽しみです🥰 (5月30日 12時) (レス) @page38 id: a10f094dfd (このIDを非表示/違反報告)
cherry*(プロフ) - ナミさん» わーー!こちらにも!!ありがとうございます🥲すごく嬉しい🥲 (2023年4月9日 19時) (レス) id: 04cb4253df (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまいました!作品の題名がすごくいいですね!!応援しています(^^)これからも頑張ってください!!! (2023年4月9日 13時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cherry* | 作成日時:2023年2月4日 17時