検索窓
今日:14 hit、昨日:8 hit、合計:27,949 hit

自由人め ページ33

真っ暗になった外を車窓から見ながら、俺は家路を辿っていた。


時刻は深夜2時。
街も寝静まっている。




普段から使っている駐車場に愛車のRX-7をとめて、同居人と愛犬の待つ家に帰る。

窓にあかりが灯っていない。
俺が言った通り先に眠りについたのだろう。

そんな彼女らを起こさないように、鍵をそっと回して静かに家に入った。





随分と遅くなってしまった。

残業があることには慣れているが、この前の大きな怪我が完治していないせいか、Aはいつもより心配をしてくれた。



無茶をするなと部下にまで口うるさく言われることもあるが、毎度のことむず痒く思う。

「心配せずとも大丈夫だ」と伝えたい。

きっと俺はどれだけ言われても変わることなんてないし、どれだけ無茶でも目の前の問題に立ち向かうだろう。





ピシッと着た灰色スーツのジャケットを脱ぐ。
軽くなった肩を労わるように伸びをして、ネクタイを緩めた。

暗かった部屋に、電気を付ける。




「……うおっ、」





そしてそこで初めて、ダイニングの椅子に座ってテーブルに伏せる人影に気がついた。




「……A?」





テーブルに飲みかけであろう水が入ったコップがある。
きっと1度は寝たのだが目が覚めたので、水でも飲もうとか思ったに違いない。






「……で、ここでもう一度寝た……ってところかな」






近づき顔をのぞき込むと、彼女はすやすやとあどけない顔で眠っている。





自由人め。
寝るならベッドで寝なさい。


ため息とともに湧く愛おしさで、口角を緩める。
その髪を掬い撫で、起こさないようにそっと持ち上げる。

ベッドまで運ぼう。
風邪をひいてもらっちゃ困るのだ。





俺が帰ってきた気配で起きないどころか、触れても起きないくらいに爆睡しているのは、俺に心を許しているからか……。
……ただの平和ボケか。


隣の部屋のベッドまで連れて、奥に優しく寝かせる。
肩まで布団を掛けようと持ち上げると、ふと、彼女の細い指に目がいった。



「……絆創膏?」




ちょっと下手にグチャっとしながら巻かれているそれは、確かに絆創膏だ。

でもなんで……?
こいつ、怪我するようなことしたのか……?




何をしたんだろうか、と考えてみる。

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (88 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
456人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

cherry*(プロフ) - Lalaさん» コメントありがとうございます🥲そう言っていただけて本当に嬉しいです❤️‍🔥亀更新ですが是非最後までお楽しみください、!! (5月30日 17時) (レス) id: 04cb4253df (このIDを非表示/違反報告)
Lala(プロフ) - 最高です!こんなに最高なストーリーは初めてです!大変でしょうが更新を待ってます。かなり楽しみです🥰 (5月30日 12時) (レス) @page38 id: a10f094dfd (このIDを非表示/違反報告)
cherry*(プロフ) - ナミさん» わーー!こちらにも!!ありがとうございます🥲すごく嬉しい🥲 (2023年4月9日 19時) (レス) id: 04cb4253df (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまいました!作品の題名がすごくいいですね!!応援しています(^^)これからも頑張ってください!!! (2023年4月9日 13時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:cherry* | 作成日時:2023年2月4日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。