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最優秀脚本賞に輝いたのは、この家の家主であり小説家である工藤優作だ。
彼の受賞に、沖矢昴は少し振り向いて画面をちらっと見る。
「……一体何を企んでいる」
「企むとは?」
「ざっと見た感じだが…玄関先に2台、廊下に3台、そしてこの部屋には5台の隠しカメラが設置されているようだ」
テレビから意識を戻して向き直り腕を組む沖矢昴に対して、俺は頬杖をついた。
「この様子を録画してFBIにでも送る気か?それとも別の部屋にいる誰かが…この様子を見ているのかな?」
どちらの可能性も低くはないだろう。
赤井秀一は誤魔化すかのように咳払いをして話題を変える。
「そもそも赤井秀一という男、僕と似ているんですか?顔とか声とか……」
「顔は変装、声は変声機」
「変声機?」
「阿笠博士の発明品で評判が良かったのに販売を辞めたものは無いかリサーチをしたんですよ。それがチョーカー型変声機……首に巻けばノドの振動を利用して自在に声を変えられる」
俺はソファから立ち上がり、未だに表情の読めない沖矢昴の元へ歩み寄る。
「その大きさは丁度…そのハイネックで隠れるぐらいなんだよ!!」
ハイネックの首元を掴んで伸ばす。
そこにチョーカー型変声機があればチェックどころかチェックメイトだ。
……が、首元からは白い肌が見えるだけであり、チョーカー型変声機は見当たらない。
沖矢昴のポーカーフェイスを崩すどころか、これに至っては俺が動揺せざるを負えなかった。
なぜだ。
どういうことだ。
完璧な推理だった。辻褄もあっている。
なのにトドメだけが刺せなくて、もどかしい。
「電話、鳴ってますけど……」
その空気を破ったのは沖矢昴だった。
鳴っているのは先程机の上に出した俺のスマホである。
部下からの着信であることを確認してその場で耳に当てる。
「どうした?遅かったな……え、あ……赤井が!?」
「《はい、来葉峠に現れ拳銃を発砲しました》」
「それで追跡は!?」
「《先頭の車はタイヤに被弾してクラッシュ、後続車もそれに巻き込まれて走行不能車の続出で……》」
「動ける車があるのなら奴を追え!今逃したら今度はどこに雲隠れするか……」
どうしてこうなる?
赤井秀一だと思っていた沖矢昴ほ赤井秀一じゃなかった。
それどころか、来葉峠にて現れて発砲までされている。
どこで間違えた。
何が違った。
焦りがじわじわと足元に忍び寄る。
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cherry*(プロフ) - Lalaさん» コメントありがとうございます🥲そう言っていただけて本当に嬉しいです❤️🔥亀更新ですが是非最後までお楽しみください、!! (5月30日 17時) (レス) id: 04cb4253df (このIDを非表示/違反報告)
Lala(プロフ) - 最高です!こんなに最高なストーリーは初めてです!大変でしょうが更新を待ってます。かなり楽しみです🥰 (5月30日 12時) (レス) @page38 id: a10f094dfd (このIDを非表示/違反報告)
cherry*(プロフ) - ナミさん» わーー!こちらにも!!ありがとうございます🥲すごく嬉しい🥲 (2023年4月9日 19時) (レス) id: 04cb4253df (このIDを非表示/違反報告)
ナミ(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまいました!作品の題名がすごくいいですね!!応援しています(^^)これからも頑張ってください!!! (2023年4月9日 13時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cherry* | 作成日時:2023年2月4日 17時