夢を見るために寝ている訳では無い ページ42
独りは嫌いだ。
考えなくていいようなことまで深く考えすぎてしまうから。
人と群れるのも嫌いだ。
そうしていなきゃ立てない自分に気がついて、嫌気がするから。
そんな感傷に浸れてるだけまだマシだ。
本当に辛い時、人は底なし沼にでも陥ったように周りの景色すら目に入らなくなるものだから。
だから底なし沼になんて入らないように、私は私の人生を客観的に見てきた。
何をするために今これをやって、あれをするためにそれを終わらす…というように、組織壊滅の為に潜入をして、明日の世界を平和に近づける為に今日私は組織の任務を引き受けた。
することなすこと全てに【意味】があって【次】がある。
全ては決まりごとのように進んで、シナリオのように私はそれに従ってるだけ。
…私は弱いから、そう考えなきゃやってられなかった。
、
初めて法を犯した時も、初めて人を殺めた時も…全てそれは組織から下った命令であり、潜入捜査官としての任務でもあった。
私のしていることは、正義か。
それとも悪か。
それを考えてしまったら、底なし沼の始まりだ。
私が今、組織の命令に従ったことで私は組織の中枢に近づける。
私が組織の中枢に近づいたから、FBIは組織についての情報をより多く得られる。
小さな1歩でしかないそれを、私は正義と信じずしてどう乗り越えればいいのか。
、
夢を見る。
自分が組織の任務を遂行する夢を。
でも必ずその夢の先に私が望む【次】は無いのだ。
悪事を働けば悪事を働いた分だけ。
人を殺せば殺した分だけ。
汚れるのは私の手ばかりで、世界の安寧には近づけない。
やることなすこと全てに【意味】は無い。
……そんな夢を。
見た日には決まって苦しさで起きる。
何かを…いや、夢の中で見つけることが出来なかった【意味】を探すかのように私の手は宙を掴もうと伸び、空を掻く。
息切れもするし汗も涙も出る。
組織潜入時代から頻繁に見ていたこの夢も、日本に来てレイと暮らすようになってからは格段に数が減っていた。
組織壊滅のプレッシャーから離れたせいか、はたまた単に環境が変わったせいか。
原因を見いだせなかった私だが、気がついたことがある。
、
怖い夢を見る時、私は必ず独りでベッドに寝ているのだ。
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作者名:cherry* | 作成日時:2022年8月23日 11時