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2人きりで赤井とおしゃべりしていた彼女をひっぺがして連れ、愛車の助手席に乗せる。

嫌味ったらしくしたつもりなのに、何一つダメージ喰らわずケロッとしている所が彼女らしい。








………って、おい。

なぜ俺はわざわざ赤井に楯突いてまで彼女を離したのだ、?





まるで赤井と一緒にいる彼女を見て不快感を覚えたかのような…
あたかもその不快感を彼女本人に気づいて欲しかったような…

いや、やめておこう。




考えるとキリがない。








赤井を嫌った結果の無意識の行動だ。

きっとそうだ。深い意味は無い。







考えるほどバカバカしくて恥ずかしくて、俺は空気を変えようと声を出した。







「きょ…今日さ...夕飯、何が食べたい」

『え?……えぇー、肉?』

「漠然としてるな…、リクエスト雑じゃないか?」

『だってお肉食べたいもん。レイは?』

「え?……えーっと………肉」

『一緒じゃん』









ケラケラと隣の彼女は笑う。

触発されたように俺も笑みを零した。







…なんて平和なんだろう。








職場でしか人と関わって来なかったような俺は、ポアロで勤務することによって人間の温かさに触れていた。

そんなポアロも半年近く前に退勤。
安室透としての任務を終えた俺には一般人との接点がなかった。






3つもの顔を抱えて忙しなく動いていた日々が懐かしいのは何故だろう。

あの日々が恋しいのは何故だろう。







…きっと、そこでなきゃ得られない幸せがあるからなんだろう。







大勢に囲まれて、慕われて。
みんなで笑って、楽しくて。






普段身を粉にして働いた先に、今触れ合っているみんなの笑顔がある。



そう考えるだけで先の見えなかった潜入任務に明かりが灯った。

終わりのない書類仕事も、苦しさも辛さも全部乗り越えることが出来ていた。


「俺のやってる事は無駄なんかじゃない」と。










そんなモチベーションなようなものを彼女の笑顔から感じた。

見ていればこちらも自然と笑えるくらい優しくおおらかな笑顔。





絶対に奪われたくはない。
どこからか湧いたそんな独占欲が頭を蝕む。







この笑顔が見れるなら、多分また苦しいことだって乗り越えられる。

この笑顔を守るために、今日も1日、国の為に生きるんだ。












そんな小さな感情が生まれた時点で俺の負けなのかもしれない。

でもまだ、ちゃんと向き合い理解するには小さすぎるような感情だった。

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作者名:cherry* | 作成日時:2022年8月23日 11時

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