case.5 ページ25
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ビルの裏口でベルのバイクから降りた私はフルフェイスのメットを脱いで彼女に返す。
それをニヤニヤしながら受け取った彼女は自身の被っていたメットから顔をのぞかせた。
相変わらず綺麗な顔だ。
裏口前には見知らぬバイクが3台停まっている。
ウイスキー達はバイクに乗らないから、恐らく第三者の介入があったとみて間違いない。
「……厄介なことになってるじゃない」
『どうやらSOSで間違いなかったみたいね』
「手まで貸してもいいけれど?」
『……あら、あなたの手は必要ないけど?』
こちらを心配そうに見ている彼女を背に、私は右手をヒラヒラと振った。
こんな所まで彼女を巻き込むような趣味はない。
自分達の落とし前は自分達で付ける。それくらいの常識は持っているつもりだ。
組織幹部に借りなんて作って溜まるものか。
ベルと別れると無防備なビルの裏口から中に入り、とりあえず狙撃スポットに予定していた階を目指す。
足音を忍ばせて部屋を確認し、中から音がしないことを確認する。
廃ビルな故に視界は悪く、薄暗いおかげで味方の姿すら視認出来そうにない。
……声を出そう。
仲間の名を呼ぼう。
そう思った瞬間、1歩踏み出した足を中心に私に向かって殺気が向くのを感じた。
走れ。
直感がそう言うから私は躊躇わず加速する。
直後、私の止まっていた場所に銃弾の雨が注いだ。
やはり隠れていたか。
こちらから見て左方向の闇に3人程度の敵が紛れている。
外にあったバイクの持ち主とみて良いだろう。
「シア!こっちだ!」
向かって1番手前側の柱の裏から聞こえたのは私を呼ぶバーボンの声。
滑り込むように彼のいる柱に背を預けると、少しでも内側に身体を隠そうとバーボンは私を腕の中に閉じ込めた。
背中には柱の冷たさを、前にはバーボンの体温を感じる。
私を狙って追いかけてきていた銃の雨はしばらく私たちの隠れた柱を撃つと、貫通は無理だと判断したのか次第に遠のいて行った。
暗闇に目が馴染むと先程よりずっと視界がクリアになってくる。
奥の方では私たちと同じようにスコッチとライも大きな柱を背に追撃を見張っているのが確認できた。
状況は限りなく不利だ。
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作者名:cherry* | 作成日時:2022年8月23日 11時