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とあるビルの地下駐車場。
1人っきりで壁に寄りかかる私。
耳に仕込んだ通信装置に着信が入る。
「《始末したか》」
『もちろんです、……要件はそれだけですか?』
「《ああ。よくやったシア》」
低い男の声が耳で鳴いた。
ジンだ。
ネズミ退治と名付けられた今回の仕事は、提携していた子会社の社長の暗殺任務。
要は組織に取って不必要になった人間の始末。
突然言い渡された任務だった上に同じく任務にあたる組織メンバーがいたので、私一人の力じゃ助けることは出来なかった。
この手がまた、ひとつの命を奪った。
切れた着信を最後に耳からイヤホンを抜いた私の前に、1台のバイクが止まる。
デカいハーレー。
フルフェイスを被ったナイスバディ。
『……なんの用?』
「あら、貴女の顔を見たくて来たのよ。シア」
『貴女にはシアと呼ばれたくないわシャロン』
「相変わらずね。さすがジンの子猫ちゃんだこと」
ベルモット。組織ではジンと同格レベルにいる幹部だ。
正直言って、彼女とは仲がいいとは言えない関係だろう。
向こうは私を気に入ってくれてるそうだが、私はどうも彼女が苦手でならない。
「ウイスキー達はどう?私の”お気に入り”なんだけど」
『賑やかで好きよ。貴女に返したくないくらいにはね』
「そう……嬉しそうな顔が見れてよかったわ、シア」
『バレンシアよ、フルで呼んでちょうだいシャロン。次呼んだら貴女の事もベルって呼ぶわ』
「私はどう呼ばれてもいいわよ、ベルも素敵じゃない」
ベルモットはふふっと顔をほころばせた。
さすが世界的女優。この女はいつも中身が読めない。
ピリリっとポケットで電話が振動した。
「あら、確認しないの?」
『……』
メールが一通、赤いマークで未読となっている。
【中央ビル】
その一言だけがスコッチから送られてきていた。
中央ビルと言えば、今日ウイスキートリオと行くはずだった任務でスコッチとライが狙撃ポイントに選んだ廃ビルではないか。
現在の時刻は夜の9時。
順当に行っていれば任務開始のバーボンの潜入まであと30分もあるはずだ。
……スコッチの性格からして、この短く言葉の足りないメールは不自然過ぎる。
一体何があったと言うのか。
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作者名:cherry* | 作成日時:2022年8月23日 11時