goodnight【降谷零】 (ページ18)

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夢ってのは大概起きたら忘れるらしいページ18

不快に感じるほどの冷や汗と激しい動悸。
乱れた呼吸。

天井に向かい伸びた手のひらが何かを掴むように空気を掻いた。

パッと開いた目で周囲の状況を確認する。

ホテルじゃ…ない。
あぁ……そうだ、レイの家だ。

2部屋しかないアパート。
和室のこの部屋は寝室で、玄関入ってすぐのフローリングはキッチンとダイニングになっている。

昨日はどちらがベッドを使って寝るかで論争をして、今後こうやって喧嘩しないためにも……と言った苦肉の策で2人で仲良くこの狭いベッドを半分こして使うことを結論とした。

よって隣には触れそうな距離でレイがいるはずなのだが、ベッドのど真ん中に寝ている私の隣は空白だ。

なんだろう。
酷く悪い夢でも見ていたような気がする。

軽く上体を起こして汗で張り付いた前髪を描きあげる。

息を深く吸い込むと、いつもレイが使っている香水のいい香りが鼻に広がり、先程よりいくらか安心を得られた気がした。

枕元に置いてあるスマホで時刻を確認するとまだ午前5時。
どうりで窓から差し込む光が弱いわけだ。

「…起きたか、おはよう」

『…おはよ』

私が起きたことに気がついたのか、レイは引き戸を開けて顔を出した。

途端に流れ込むいい匂い。

『……味噌汁？』

「正解。まだ早いしゆっくりしててもいいけど…」

『ううん、起きる。仕事？』

「ああ、午前だけだけどな」

部屋に入ってきた彼はスーツにエプロンをした状態で棚を漁り、小さなタオルを出して私に手渡した。

顔を洗えと言いたいんだろう。

「悪いけど新品は無いんだ。使い終わったら洗濯機の中に投げといてくれて構わない」

『ん、ありがと』

「僕はもう行くけど、ご飯は冷めないうちに食べてくれ。俺が帰ってくるまでは家から出ないように頼む」

『……牢屋じゃん』

「監視対象だから仕方ないだろ？……あと、」

『ん？』

「……うなされてたみたいだけど」

ストレートに気になったことをぶつけてくるなぁ。

……まあでも、それがこの人の優しさか。

『寝つきはいつもより良かった方よ。レイはいい夢見れた？』

「夢は見なかったけど、 ……俺もいつもよりしっかり寝れたよ」

彼の手は優しく私の頭をポンポンと撫でた。

「いってきます」

『いってらっしゃい』

それは互いに、久しぶりに触れた温もりのせいかもしれない。