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血が垂れるからと遠慮したけど中に上がらせていただき、椅子に座らされると松田さんは何かを取りに行った




「脱げ」

『………………は』






1分程で戻った松田さんが抱えていたのは救急箱

言葉足らずで困るけど私はお言葉に甘えて1番傷の酷い左腕を服から出した

綺麗で細い指先を血で濡らしながら、松田さんは私の怪我を丁寧に処置する

ちなみにインナーはしっかり着ているので安心して欲しい






「……見つけたのが俺で助かったな」

『すみません…』

「ゼロやヒロの旦那と同じような仕事してんだろ、簡単に病院に行けねぇのは厄介だな」









自ら身分は明かしていない

故に松田さんのような零さんの同期たちにとって、私は所詮顔見知り程度の仲だ

それでも少ない情報から私を【公安警察】だと判断し、それに直接触れないように気を使う










『この部屋は……?』

「大学時代に俺が借りてた部屋だ。家賃も安いからたまにこうやって独身寮抜け出してきてる」

『……独身寮抜け出すとか、、問題児じゃないですか』

「あ?」











警察庁勤務の男性警察官は原則として独身寮に部屋を借りる

例外は結婚して自分の家を持つことくらいであり、独身であるはずの松田さんは独身寮に部屋を持っているはずだ

規則の厳しい中で独身寮抜け出すとか……いかにも問題児だ





消毒と血の匂いが部屋にしみたタバコの匂いと混ざる







『怪我のこと……零さんに言いますか?』

「なんでだ」

『内緒にしておいて欲しいです』

「……わかった」






零さんにバレたら怒られるからってのが半分

もう半分は、彼に要らない心配をかけさせたくないからだ













「……っし、出来た。他は?」

『いえ、後は大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました』

「ポアロで会う時と雰囲気まで違ぇんだな、A」






つっても、本名じゃねぇか……と苦笑いをした彼に私は釣られるように頬を上げた






『Aは偽ってません。それ以上は国家機密ですけどね』

「……俺に言っていいのか、そんな事」

『手当のお礼です。知ってしまった以上、命の保証はできませんけどね』

「随分物騒なお礼だな」

『それが私たちのやり方です』

「おい、ふらついてるぞ」





転びそうになる足元に抗うように壁に手を置く

頭はまだ痛い

でも長居はしたくない




『いつもの事です。お世話になりました』





淡々と言葉を置き私は足早にアパートを出た

警察庁にて→←case.9-路地裏にて



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作者名:cherry* | 作成日時:2022年7月12日 21時

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