雨 ページ42
長尾「やっほ〜、結城。何かめっちゃ濡れてるな」
『シャワーを浴びて体はポカポカ、髪はヌレヌレの状態で登場した結城ちゃんです』
西畑「アホ、変な冗談言ってないで早く髪を乾かしーや」
大吾くんは呆れた表情を浮かべながらドライヤーとタオルを渡してくれた。
ありがたいんやけど、結構押してるはずやし乾かしてる暇ないんちゃう?
うちが考えてることを読み取ったのか、丈くんは「あぁ」と声を洩らした。
藤原「スタッフさんが乗ってる電車が遅延してて、人手が足りないんよ。
人が集まるまでは撮影が出来ないから、20分ぐらい待機予定」
『なるほど〜。じゃあ、20分かけて髪乾かさないと』
藤原「何でやねん」
息をするようにサラッとボケると、素早く丈くんが反応してくれた。流石、うちの相棒。
声のトーンもタイミングも完璧やわ。
ニコニコしながらドライヤーの電源を入れようとしたとき、「そういえば」と恭平が口を開いた。
高橋「佐藤さんが”結城がびしょ濡れで事務所に入ってきた”って言ってたんやけど、ホント?」
『ん?うん。道端に傘を寄付したら全身濡れちゃって』
大橋「道端に傘を寄付ってどういうこと!?」
元より、傘を閉じる前から割と濡れてたんやけどな。
一度濡れると「まぁ、いっか」ってなっちゃうんよなぁ。アレ、何なんやろ。
「こんな大雨なのに道端に傘置いてきたん……?」とドン引きするみっちー。
『いや、そこまで引かんでも……。あ、帰りはうちと相合傘してくれるってこと?』
道枝「……」
『冗談やから!雨宮ジョークやって〜!』
そっとみっちーに視線を逸らされた。もはや、ツッコむ気にもなれないってことなんかな。
すると、流星くんが「いくら傘が邪魔になったとしても、道に捨ててきちゃダメやろ」と、
物凄くまともなことを言い出した。正確には、不法投棄もポイ捨てもしてないんやけどね?
西畑「で、肝心の傘はどこに置いてきたん?」
『あぁ、その話まだ深堀りするんやな』
西畑「そりゃするやろ!雨やのに傘差さへんどころか道に置いてくるんやで!?追及したくもなるわ!」
ごもっともです。うちはタオルを頭に被せて髪を拭きながら「ん〜」と声を洩らした。
どう話そうかなと考えた末、うちは段ボールに入っていた捨て猫のことを正直に伝えた。
ここで変に誤魔化してもすぐバレるし、何より特に隠す理由がないからな。
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作者名：雨萩さくり | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/n15a76543b1
作成日時：2024年3月16日 13時
