なにわ恋愛注意報発令中＿＿＿!?【Ⅱ】 (ページ41)

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『え?』

思わず聞き返してしもうたのは正直しゃーなしやと思う。
やって、うちの事務所のアーティストの忘れ物かと思ってたんやもん。
マネージャーさんの服をお借りするケースは珍しい。

「結城さんがずぶ濡れで来るのは想定済みでしたので。予め服を用意してたんです」

『仕事が早いとかそういうレベルじゃなくなってきてませんか』

「残念ながらこういう出来事は初めてではありませんからね」

何も言い返せん。うちは頭を下げながら「すみません」と謝罪した。
佐藤さんはこちらに向かって一瞥した後、「アイドルとしての自覚を持ってください」と怒った。
”普通、アイドルは大雨の中傘も差さずに街を歩いたりしません”と言い切る佐藤さん。

『いや、歩いてたわけやないんです。ちゃんと走りました』

「……そうですか」

『待ってください佐藤さん。そんなゴミを見るような目でみないでください』

177cmある佐藤さんに軽蔑された目をされると、より恐怖感が増す。
イケメンがしちゃアカン顔してるって。下手したら放送規制掛かるんちゃう?
そんなジョークを脳内で言っていると、佐藤さんは”はぁ”とため息をついた。

「もう皆さん集まっているので、早くスタジオに行った方がいいですよ」

『この流れでそれを言われると、何か捨てられた気持ちになるんですけど』

「大丈夫、あなたがこの世界から身を引くその日まで私がこき使いますよ」

『全然大丈夫やないんですけど』

冗談半分やろうけど、たぶん残りの半分は本気だ。
「怖いなぁ……」と声を洩らしながらも、彼なりの優しさなんやろうなぁって思った。
うちがこの世界から身を引くその日までこき使う＿＿＿。
言い換えれば、ずっと一緒に居てくれるってことやからな。

『佐藤さんって結構ツンデレですよね』

「……成程。4時間説教コースがお望みだったとは。それは知りませんでした」

『さっきより増えてる!?すみません、2割はジョークです!!』

「8割本気じゃないですか。はぁ、冗談を言ってないで早くスタジオに向かってください」

うちは「はーい」と返事をしながら、みんなが待機してる場所に足を向けた。
最初は怖くて近寄り難いオーラを放っていたけど、今となっては我ながら良いコンビやと思っとる。
ー－－ホンマ、佐藤さんは最強で最高のマネージャーやわ。
あの人がうちを担当してくれて良かった。