自覚 ページ38
平野紫耀side
＿＿＿雨宮結城。彼女は、俺にとって妹みたいな存在やった。
いつも真っ直ぐで努力家で、思いやりの心がある明るい子。そんな風に思ってた……はずだった。
King&Princeでとある雑誌の表紙撮影をしてたとき。その悲報は突然入ってきた。
”なにわ男子・雨宮結城さんがライブ中に故障した照明の下敷きになり、救急搬送されました”
休憩中、偶然視界に映ったネットニュースの記事。俺は反射的にスタジオの出口に体を向けた。
ー−−やけど、その動きは誰かに腕を掴まれたことによって止まった。
後ろを振り向くと、「どこ行くつもりなん」と低い声を出す廉が立っていた。
平野「結城の、とこ。今、病院に、いる」
永瀬「バカ、俺らは仕事中やで!?行けるわけないやろ!」
平野「でも、結城が」
永瀬「俺らが言ってもどうにかなるわけやないやろ。それに、搬送先も知らんのにどこ行くん?」
俺は何も言い返せず黙ってしまった。
今すぐ結城に会いたいけど、俺がどうこうすることも出来ない。それに、仕事も放棄出来へん。
自分の無力さを痛感しながら床に座り込むと、「あいつは死なへんよ」と呟く声が聞こえた。
永瀬「あいつはしぶといからな。簡単に自分の命を手放す珠じゃないって」
平野「……ぁ、うん」
俺を諭すように優しい声で話しかける廉に視線を流すと、
初めて見るって言っても過言やないぐらい過去一焦った顔をしていた。
廉に気を遣わせてしまったことに申し訳なさを抱きながら、仕事を再開させた。
幸いにも今回の撮影のテーマが「大人カッコいい」やったから、
少し無表情になっても怒られることはなかった。
たぶん、スタッフさんも俺らの気持ちを察してくれはったんやと思う。
仕事が終わった後、大吾に連絡して病院に行こうとしたんやけど、
既に面会時間が終わってもうて結城に会うことは出来んかった。
俺は家に帰ってベッドに倒れ込んだ。
結城がいなくなったらどないしよう。こんなんやったら、もっと早くに伝えておけば……!!
そこまで考えて、俺は「ん?」と自分に首を傾げた。伝えておくって、何をやろ。
自分で考えたはずの謎思考に頭を巡らせていると、何故か大吾の声が聞こえたような気がした。
”恋愛に鈍い人って、相手がいなくなったら自分の想いに気付くらしいで。
最近観た映画でヒーロー役の人が言ってた。何か、ちょっと不憫な気ぃするよな”
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作者名：雨萩さくり | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/n15a76543b1
作成日時：2024年3月16日 13時
