風邪 ページ24
道枝駿佑side
”結城が熱を出したそうです。本人は行けると話していましたが、大事を取って休ませました。
ご迷惑をお掛けしますが、宜しくお願い致します”
結城ちゃんのマネージャーさんから唐突に連絡が来て、俺は危うくスマホを落としそうになった。
めちゃくちゃ焦って心配やったけど、仕事を放棄するわけにもいかず俺はずっとそわそわしとった。
大体の仕事が終わったら速攻で結城マネのところに向かい、合鍵を貸してもらった。
道の途中で恭平と合流し、俺たちは急いで結城ハウスに足を向けた。
インターフォンを押すと「はい」と死にそうな声の結城ちゃんが出たため、
手短に事情を説明して中に入れてもらった。
玄関で倒れている結城ちゃんをベッドまで運び、
恭平はおかゆ作り・俺は介抱といったそれぞれの準備に取り掛かった。
「何かして欲しいことある?」と聞きながら頬を撫でると、その手をギュッと握られた。
『ん。冷たくて気持ちぃ……』
道枝「っ!!」
ドキドキしてる場合やないってことは分かってるんやけど、俺の心臓は高鳴ってしまった。
俺のことが大好きやって言うくせに、辛いときは頼ってくれへんから甘えてくれるのが新鮮やった。
このまま俺にずっと甘えてくれたらええのにって思う心は、いけないことなんやろなぁ。
『ごめん、な。迷惑、掛けちゃって』
道枝「誰だって体調崩すことあるし、気に病まんでも大丈夫やで」
今にも泣きそうな結城ちゃんを宥めると、彼女は嬉しそうに口角を上げた。
結城マネ曰く、過労によって倒れたらしい。
あんまり無理せんといて欲しいんやけど、俺たちのお願い聞いてくれるんかな。
『ありがとう』
道枝「ん?うん」
『紫髪くん……』
温まっていた俺の心臓が、一気に冷えた気がした。まるで、体を誰かに突き刺された気分やった。
あぁ。そうか。結城ちゃんが安心したように笑ってたのは、俺を紫髪くんと勘違いしとったからや。
彼女の手を握り返しながら涙を抑えていると、「どうしたん?」と尋ねる声が聞こえた。
高橋「おかゆ出来たで」
道枝「……あぁ、ありがと。今起こすわ」
高橋「ちょっと待って」
お皿をベッドの近くに置いた恭平は、俺の顔を覗き込んだ。
俺を見つめる瞳はとても真っ直ぐで、何でも見透かされてしまいそうな気持になった。
恭平は不安そうな表情を浮かべながら「大丈夫?」と聞いた。
高橋「みっちー、何か変やで」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 55人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨萩さくり | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/n15a76543b1
作成日時：2024年3月16日 13時
