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「なら、好きな人は居るんじゃないですか？」
そして後輩たちによって未だに繰り広げられていた野暮な話に、俺はこの話題になってから初めて、首を横に振るのを躊躇った。
「うーん……」
浮かぶのはAさんの顔。「おっ」と、期待に満ちた後輩たちの視線が集まる。
もしここで「居る」と答えたとして。それを彼女が聞いたらどんな顔をするのだろう。誰を指していると思うのだろう。
自分には関係のない話だと素知らぬ顔をするだろうか、「誰なんですか？」と問い質すだろうか、……それとも。
一瞬自分の都合のいいように考えて、それはあまりに虫が良すぎると
「……微妙」
「うわずる！ なんですかそれ！」
「完全否定しない時点でそれはもう好きって事ですよ〜」
「いやでも、向こう敬語だから」
「敬語とかそんなん関係無いですって！」
「大事なのはココっすよココ！ パッション！！」
斜向かいで盛り上がる後輩をはいはいと流して、空いた網にトングで生肉を乗せていく。俺はタンが食べたいんだ、タンが。
相変わらず肉の焼ける音と響く話し声に、店内のBGM。
その中であってもメッセージを受信した事に気がついたのは、話題の中心から逃れる理由を探していたからかもしれない。
トングを置いてスマホを手に取る。
画面を見て受信していたメッセージに、思わず表情が強張ったのが分かった。
『今日』
『泊めてほしいの』
今しがた話題に上がり俺の脳内を占めていた、彼女からのメッセージ。
泊めてほしい。
何処に？ なんて、聞くまでもない。
俺にメッセージを送っているんだから、俺の家に決まってる。誤送信じゃない限り。
家に泊めて欲しいと。またどうして突然そんな事を。
というか今日も東京に来てたのか。
一旦すべきは状況の整理だ。一先ず理由を訊ねてみる。
『ちょっと待って、なんで？』
『理由は……直接話すから。お願い』
その何やら深刻そうな文面に、逼迫した状況なのかと嫌な方に思考が傾く。
……こうなったら、了承せざるを得ないだろう。どの道会わなきゃ理由も教えてくれないみたいだし。
何時頃になるかだけ聞いて、あとは自宅の最寄りまで来てもらうことにした。
最寄りから家までは15分ほど。その間に理由を聞けばいいだろう。
……というか、この人。
もしかしてそういう事を誰にでも言っていたりするんだろうか。
もしそうであるなら、親御さんの過保護っぷりにも合点がいくけれど。
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じばくスイッチ(プロフ) - ユメさん» そんな風に思って頂けたら……というコメントを頂戴して驚きと共に大変嬉しいです。ありがとうございます。きっと青春って甘くてきらきらしたものばかりじゃないよなぁという思いで書いておりました。こちらこそ、読んでくださり本当にありがとうございます。 (2023年3月10日 7時) (
レス) id: 3711322760 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ(プロフ) - ほんの少し何かが違っていれば結ばれていたようで、でも何度やり直しても同じ結末を辿りそうな二人の関係が本当に切なくて美しくて、こんなに素敵な作品を世に出してくださった作者様に感謝です。 (2023年3月9日 21時) (レス) @page26 id: c6aaf0c2c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：じばくスイッチ | 作成日時：2023年1月3日 23時
